上杉山御剣は躊躇しない

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
114 / 123
第三章

第28話(3) 金色の夜叉

しおりを挟む
「はっ!」

「そら!」

「ふん!」

 突如現れた中折れ帽子を目深に被って大きめのマスクを付けた白いスーツ姿の男が二又の槍で、山伏姿の長い黒髪を後ろで一つ縛りにした男が二本の小太刀で、それぞれ御剣に襲いかかるが、御剣は刀を取り出してそれを難なく防ぐ。

「へえ、隙を突いたつもりだったのだけど……」

「ちっ、相変わらずムカつく女だぜ……」

「なるほど……剛力などの出現は貴様の差し金か、狂骨(きょうこつ)!」

 御剣は刀を強く押し返すと、二人の男は後ろに飛んで、御剣と距離を取る。スーツ姿の男がクスクス笑いをしながら答える。

「……その通り」

「そうか、あいつは根絶した妖を復活させることの出来る半妖か」

 勇次が金棒を構えながら呟く。その呟きに一美が反応する。

「え? そうだったの?」

「姉ちゃん、あいつらと行動を共にしていた時があっただろう?」

「その時期はなんというか、頭がぼうっとしてよく覚えていないのよ……」

「そ、そうか……まあ、覚えてなくても別に良いか」

「そうよ」

「おいおい、かつての同志に対してあまりに寂しい物言いだね?」

 一美の言葉に狂骨は苦笑する。一美が話す。

「洗脳されていたようなものよ、志もなにもあったものじゃないでしょ」

「確かにそれはそうかもしれないね」

 狂骨はうんうんと頷く。一美が首を捻る。

「物分かり良いわね……」

「あらためて……鬼ヶ島一美さん」

「はあ……なんでしょう?」

「半妖の同志として、我々と共に……」

「ごめんなさい」

 一美が素早く頭を下げる。狂骨が頭を軽く抑える。

「秒で断るとは……話くらい聞いてくれても良いんじゃないのかい?」

「聞くだけ無駄です」

「ははっ、これは手厳しい」

 狂骨はやれやれと言った風に両手を広げる。

「ナンパは失敗だな」

「ああ、そうだね」

 山伏姿の男の言葉に狂骨は頷く。

「やっぱり強引にでも連れていくしかないか」

「女性相手に気が進まないけどね」

「今更紳士ぶってんじゃねえよ」

「そういう君は無理に悪ぶらなくても良いんじゃないか、烏丸君?」

「その名を呼ぶなって言ってんだろうが……」

「あ、彼は覚えているわ、烏天狗の半妖、烏丸黛(からすままゆずみ)君」

「うおおおい⁉ フルネームで呼ぶな⁉」

 一美の発言に烏丸と呼ばれた男は慌てる。勇次が顎に手を当てる。

「天狗は天狗でも、烏天狗の半妖だったのか。烏丸って……そのまんまだな……」

「お前にだけは言われたくねえよ! 鬼ヶ島勇次!」

 勇次に対し、烏丸が声を荒げる。御剣が呟く。

「烏丸、からすま、カラスマ……マスカラ……」

「おい! その連想ゲームはやめろ……」

「まつ毛なのか、まゆ毛なのか、ややこしい名前だな……」

「って、おおい‼」

「た、隊長、真顔でボケないで下さい……」

 一美が肩を震わせる。御剣が首を傾げる。

「? ボケたつもりはないが?」

「ま、真面目に疑問に感じたんですか、それはそれで……」

 一美が笑いをこらえきれなくなる。烏丸が叫ぶ。

「き、気にしていることを……!」

「気にしていたのか?」

「ああ、そうだよ!」

 烏丸が半ばやけくそになって、狂骨に答える。

「それなら僕みたいに半妖らしい名前を名乗れば良いじゃないか」

「そんな痛々しいこと出来るかよ!」

「い、痛々しい……?」

 烏丸の言葉に狂骨はショックを受ける。

「いや、痛々しいってのは言い過ぎたかもしれねえ……」

「そんな風に思っていたんだね……」

「ええい! そんなことはどうでも良い! さっさと黙らせるぞ!」

「!」

 烏丸が背中の羽を広げ、一美の懐に入る。

「おらあっ!」

「くっ⁉」

 一美が鎌で烏丸の攻撃を防ぐ。烏丸が笑う。

「へっ、やるじゃねえか! ただ、この連撃はどうかな⁉」

「ぐっ⁉」

 烏丸の素早い連続攻撃に対し、一美の対応が遅れる。

「姉ちゃん!」

「一美!」

「おっと、そうはさせないよ!」

「ちっ!」

 一美の援護をしようとした勇次と御剣の前に狂骨が立ちはだかる。

「足止めしている間にケリをつけてくれ」

「ああ! 動けない程度に痛めつける!」

「むう……!」

「ははっ、そんな鎌さばきで俺の連撃を防げるわけねえだろう!」

「ね、姉ちゃん!」

「大丈夫よ、勇次……お姉ちゃんは負けない!」

 一美が叫ぶと、その体全体を包むように金色の気が充満し、頭部に細い角が生える。烏丸が戸惑うと、狂骨が踵を返し、一美に相対する。

「援護するよ、烏丸君!」

「うおおおっ!」

 一美が金棒を横向きに薙ぐと、金色の光が閃き、烏丸と狂骨は思い切り吹き飛ばされる。

「す、凄い、一撃で……」

 感嘆する勇次に一美が尋ねる。

「どうかしら?」

「え? き、金色だな……」

「見たまんまじゃない……」

「くっ……」

「⁉」

 狂骨の左眼の骸骨化した部分が露になり、一美は一瞬体をビクッとさせる。狂骨は帽子を拾って烏丸に話しかける。

「覚醒のきっかけを掴んだようだね……厄介だ、ここは一旦退こう」

「仕方ねえ! 注意を引けただけ良しとするか!」

「む!」

 烏丸が強風を起こし、それを利用して、狂骨と烏丸はその場から姿を消す。一美が呟く。

「覚醒って……力を入れる度、金色になるの? あんまり派手なのは嫌なんだけど……」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...