上 下
2 / 3
第1章 第二の人生

第2話 騎士団とジャイアントベア ①

しおりを挟む
 さて、家に帰ってきたわけなんだが……。
「苦しいよ、お母さん」
 なんかすごい抱きしめられててとても苦しい。息が出来ない。
 しかし困ったな、シランである俺の一人称は僕らしい。
「まさかシランが一人で山菜採りに行けるようになるなんて……!」
「それくらいもう8歳なんだから出来るよ……」
 一人称が僕なんて小学生以来だ。まあ仕方ない、頑張るか。
「あの、お母さん」
「どうしたの? シラン」
 魔法を覚えたい、と言いたいところなんだが……。
 うちは父親が俺が生まれてすぐいなくなってしまったらしい。
 だからこんな事を言うと迷惑をかけるよな……。
「いや、なんでもないよ。じゃあちょっと遊んでくるね!」
「夕方までには帰ってくるのよ~」
 逃げるように家を出て来たがどうしよう。
 というか魔法ってそもそもどういう風に覚えるんだ?
 一度は実物を見てみないと分からないな……。
 ん? なにやら村の入り口で誰かが騒いでいる。
「――だから! ジャイアントベアが出たから村の騎士団を動かしてくれ!」
「何故だ? ジャイアントベアくらいお前らでも倒せるだろう?」
 確かジャイアントベアってD⁺級だから騎士団が動かなくても倒せるとは思うが……。
「違うんだ! 何故か集団行動をしていて連携も取れていたんだ! 俺達はCランクだがそれでも負けてしまったんだ、どうにかしてくれ!」
「集団行動、それに連携……? すまない、領主様と掛け合ってみるからお前たちは早く救護施設に行け、ケガをしているんだろう?」
「ありがたい、出来るだけ早くしないと村民にも被害が出てしまう……」
 ジャイアントベアといえばたまに畑を荒らしに来るが村の冒険者ならまだ倒せるはずだ。
 しかしこれだと騎士団が動きそうだな。
 ついていけば魔法が見られるかもしれないし、バレないように尾行しよう。
 ちなみに何故、俺が見るだけで覚えられるようになるのかというと、俺は鑑定、そして習得スキルを持っている。
 習得スキルとは自分の思い描いたスキルを習得出来るが、その事象について深く知る必要がある。
 鑑定スキルで深く見、習得スキルでそうだな、火魔法を覚えたとしよう。
 魔法とは一度習得すればどんどん次段階の魔法を覚えることが出来る。
 しかし、魔法が強くなればなるほどコントロールが難しくなってしまうので、未熟者が次段階の魔法を発動するのは法律で禁止されている。
 何せ暴発したら大変だからな。
 お、騎士団が兵舎から出て来た。ついていくか。
しおりを挟む

処理中です...