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崩れた神殿
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神殿の内部は乾燥した土のにおいに満ち、埃っぽく自身の靴音さえ響かない。
崩れた部分から射し込む陽の光のため、思った程暗くはなく、歩くにも支障はなかった。
ほとんどの魔物は、神殿の地下に棲んでいるということだったが、地下でなくとも出て来る奴らがいるかもしれないと、カルフは魔物の出現に備え慎重に進んでいく。
そのうち、カルフの耳におかしな音が飛びこんできた。
カルフは立ち止まり、耳を澄ます…
(女の声…?)
言葉は不明瞭だが、その声は確かに女性のものだった。
(まさか…!
何者かが地下に迷いこみ、魔物に追い詰められているのか!?)
そう考えた瞬間、カルフは走り出していた。
宿の主人に聞いた通りの場所に、地下に続く階段をみつけたカルフは、転がるような勢いで階段を駆け下りる。
(うっ…)
カルフの鼻をついたのはなにかが焦げたにおいとそれに混じる生臭い血のにおいだった。
カルフの胸を、不吉な予感が過る。
先程の声の主の身に、何事かが起こったのではないか…
あの声は瀕死の彼女が搾り出した最後の言葉ではなかったのか…と…
「誰か!
誰かいないか!」
その声に、どこかで何かがざわざわと動く気配を感じ、カルフは剣の柄に手をかけ周りを見渡す。
(……あ)
その時になって、カルフはその場所の異常に気が付いた。
そこは陽の光の届かない地下であり、壁にかけられた松明にも火はくべられていないというのに、あたりはほのかな灯かりに包まれていることに。
(なぜだ?なぜ、ここは…)
「あんた…誰?」
不意に聞こえた声に、カルフは反射的に腰から剣を引き抜き身構えた。
「あ……」
カルフの目の前にいたのは、どう考えてもこの場所には不似合いなうら若き絶世の美女だった。
真っ黒なフードのついた長ローブという色気のない服装ではあったが、カルフはその美しさに言葉を失い、口を開けたままその場に立ち尽くす。
「……聞こえなかった?
あんた、誰?」
美しい顔とは裏腹な乱雑なもの言いをするかすれた声にはかなりきつい酒のにおいがこもっていた。
カルフは剣を身構えていたことに気付き、焦ってその剣を降ろす。
崩れた部分から射し込む陽の光のため、思った程暗くはなく、歩くにも支障はなかった。
ほとんどの魔物は、神殿の地下に棲んでいるということだったが、地下でなくとも出て来る奴らがいるかもしれないと、カルフは魔物の出現に備え慎重に進んでいく。
そのうち、カルフの耳におかしな音が飛びこんできた。
カルフは立ち止まり、耳を澄ます…
(女の声…?)
言葉は不明瞭だが、その声は確かに女性のものだった。
(まさか…!
何者かが地下に迷いこみ、魔物に追い詰められているのか!?)
そう考えた瞬間、カルフは走り出していた。
宿の主人に聞いた通りの場所に、地下に続く階段をみつけたカルフは、転がるような勢いで階段を駆け下りる。
(うっ…)
カルフの鼻をついたのはなにかが焦げたにおいとそれに混じる生臭い血のにおいだった。
カルフの胸を、不吉な予感が過る。
先程の声の主の身に、何事かが起こったのではないか…
あの声は瀕死の彼女が搾り出した最後の言葉ではなかったのか…と…
「誰か!
誰かいないか!」
その声に、どこかで何かがざわざわと動く気配を感じ、カルフは剣の柄に手をかけ周りを見渡す。
(……あ)
その時になって、カルフはその場所の異常に気が付いた。
そこは陽の光の届かない地下であり、壁にかけられた松明にも火はくべられていないというのに、あたりはほのかな灯かりに包まれていることに。
(なぜだ?なぜ、ここは…)
「あんた…誰?」
不意に聞こえた声に、カルフは反射的に腰から剣を引き抜き身構えた。
「あ……」
カルフの目の前にいたのは、どう考えてもこの場所には不似合いなうら若き絶世の美女だった。
真っ黒なフードのついた長ローブという色気のない服装ではあったが、カルフはその美しさに言葉を失い、口を開けたままその場に立ち尽くす。
「……聞こえなかった?
あんた、誰?」
美しい顔とは裏腹な乱雑なもの言いをするかすれた声にはかなりきつい酒のにおいがこもっていた。
カルフは剣を身構えていたことに気付き、焦ってその剣を降ろす。
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