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番人の館
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静かに開いた扉の向こうにいたのは背の高い初老の男性で、なにも言わず僕の顔を見ていた。
「あ、あの…
突然訪ねて来て申し訳ありません。
実は僕…」
「迷われたのですね。
どうぞ、お入り下さい。」
「あ……ありがとうございます。」
男性は、僕が話すのを待たずに、僕を屋敷の中へ招き入れた。
男は振り向きもせず、僕の前をさっさと歩いて行く。
屋敷の中は、清潔に保たれ調度品が品良く並べられていたが、どこか古臭い感じがした。
そう…軽く百年は昔の雰囲気だ。
電化製品らしきものが何一つない。
明かりにまで、ランプや蝋燭が使われている始末だ。
いくら田舎だとしても、こんなに不便な生活をしているのはおかしい。
今時、電気が通ってない所などほとんどないはずだが…
そんなことを漠然と考えている間に男は階段を上がり、ある部屋の前で停まった。
「この部屋をお使い下さい。」
男は、ドアノブを廻し、扉を押し開けた。
「あ……あの、僕は、その……電話を貸していただければ、家の者に迎えに来てもらいますから、ここの番地を教えていただけますか?」
「あいにくですが、ここには電話はございません。
番地もないのです。」
「またそんな……番地がない所など……」
「本当にないのです。」
男は首を振ってそう言うと、口を真一文字に結んだ。
「……では、僕はどうす…」
「そうそう…大切なことを言っておかねばなりません。
外は霧が濃く、非常に危険です。
ですから、霧が晴れるまで決してこの屋敷の傍をお離れにならないように…」
「で…ですが、僕は…」
「ご心配はありません。
しばらく、ここで過ごされていたらきっとすぐに進めるようになりますから。
……あ、お腹は減ってませんか?
それともなにかお飲み物を…?」
「あの…えっと…
では、とりあえず、コーヒーをお願いします。」
「承知しました。
すぐにお待ちします。」
僕は、割り当てられた部屋の長椅子にどさりと身体を預けた。
どこか、おかしい。
あの男は親切ではあるけれど、どこか様子がおかしい。
この家の様子では、電話がないのは本当のことかもしれないが、番地がないなんて一体どういうことだろう?
(いや、その前にどうして僕はこんな所にいるのか、だ。)
「あ、あの…
突然訪ねて来て申し訳ありません。
実は僕…」
「迷われたのですね。
どうぞ、お入り下さい。」
「あ……ありがとうございます。」
男性は、僕が話すのを待たずに、僕を屋敷の中へ招き入れた。
男は振り向きもせず、僕の前をさっさと歩いて行く。
屋敷の中は、清潔に保たれ調度品が品良く並べられていたが、どこか古臭い感じがした。
そう…軽く百年は昔の雰囲気だ。
電化製品らしきものが何一つない。
明かりにまで、ランプや蝋燭が使われている始末だ。
いくら田舎だとしても、こんなに不便な生活をしているのはおかしい。
今時、電気が通ってない所などほとんどないはずだが…
そんなことを漠然と考えている間に男は階段を上がり、ある部屋の前で停まった。
「この部屋をお使い下さい。」
男は、ドアノブを廻し、扉を押し開けた。
「あ……あの、僕は、その……電話を貸していただければ、家の者に迎えに来てもらいますから、ここの番地を教えていただけますか?」
「あいにくですが、ここには電話はございません。
番地もないのです。」
「またそんな……番地がない所など……」
「本当にないのです。」
男は首を振ってそう言うと、口を真一文字に結んだ。
「……では、僕はどうす…」
「そうそう…大切なことを言っておかねばなりません。
外は霧が濃く、非常に危険です。
ですから、霧が晴れるまで決してこの屋敷の傍をお離れにならないように…」
「で…ですが、僕は…」
「ご心配はありません。
しばらく、ここで過ごされていたらきっとすぐに進めるようになりますから。
……あ、お腹は減ってませんか?
それともなにかお飲み物を…?」
「あの…えっと…
では、とりあえず、コーヒーをお願いします。」
「承知しました。
すぐにお待ちします。」
僕は、割り当てられた部屋の長椅子にどさりと身体を預けた。
どこか、おかしい。
あの男は親切ではあるけれど、どこか様子がおかしい。
この家の様子では、電話がないのは本当のことかもしれないが、番地がないなんて一体どういうことだろう?
(いや、その前にどうして僕はこんな所にいるのか、だ。)
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