お礼（無謀）企画

旅立ちの日

１

＊



（まさか……
これは……本当に現実…？
夢ではないのか…？）



俺は目の前に広がる信じられない光景に、がっくりと膝を着いた。
着いた膝から、じんわりと温かい熱を感じて、俺は愕然とした。



違う…
ここは、俺の知ってるナロの村じゃない…
俺が生まれ育った、ただのどかで平和なだけのあの村じゃない…



ナロの村は四方を山に囲まれた、緑ばかりの村だった。
なのに、今、ここにあるのは茶色と黒と赤…
なにもかもが焼け焦げ、今でも所々で赤く小さな火が燃えて、空さえもがすすけて、不自然な灰色の雲に覆われている。
ここにあった建物も木々や動物や…そして、人間達もが何もかも跡形もない程に焼き尽されて…



「アイラ、マギー…
父さん、母さん……」



俺は地面を拳で叩き付けた。
温かい地面を何度も何度も…
こんなことをしても、なくなった者は帰らない…
そんなことは言われなくてもわかっている…しかし、今の俺にはただそうすることしか出来なかった。
この絶望的な光景を目の前にして、俺はそうすること以外、何も思いつかなかった。