お礼(無謀)企画

ルカ(聖夜月ルカ)

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穏やかな村

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***



 何が発端だったのか…
そんなことを知る者は誰もいません。
ただ、一度始まってしまった人間と魔物の戦いは、日を追うごとに激しさを増し、戦が何年も続くうちに、大勢の魔物と人間が死んでしまいました。
 人間も魔物ももはや何のために戦っているのかわかりませんでしたが、生きるためには戦うしかなかったのです。

ですが、その中に全く戦わない者達がおりました。
それは、魔物の中でも特にたいした力を持たない種族でした。
 小柄で、ふかふかとした茶色い毛に全身を覆われ、くるくるとよく動く黒い目をした者達です。
 彼らは、山間の人間の村の傍にこっそりと現れては、人間の暮らしをのぞき見るのが楽しみでした。



 「人間の子供って、ちっちゃくてふわふわしてて可愛いなぁ…」

 「年寄りも面白いよ。
 腰がこんなに曲がってさ。」

 「お祭りの時は賑やかで楽しいね。」



この魔物たちには、姿を変えるという能力がありました。
 魔物たちは人間に変身し、村で見て来た人間の真似をしてはみんなで大笑いするのが楽しみでした。



しかし、魔物と人間の戦争が始まり、ついには魔物たちの住む地域も戦禍に巻き込まれました。
とはいえ、彼らは人間には何の恨みもありません。
ですから、魔物たちと一緒に、人間を襲うことはしませんでした。
 山の中に深い穴を掘り、彼らはじっと身を潜め、戦争が終わるのをひたすらに待ちました。



やがて、何年も続いた戦争が終わり、彼らが穴から出て来た時には、あたりは焦土と化していました。




 「……なんてことだ……」



 青々とした木々や、季節ごとに色鮮やかな花が咲いていた場所には、もう何もなく…黒ずんだ焼け野原だけがずっと遠くまで広がっていました。
 停まるところを失った小鳥たちももういません。



 彼らがよくのぞきにいった人間の村も同様でした。
がらくたと一緒に転がる人間や魔物の亡骸に、彼らは言葉を失い、ただただ熱い涙を流しました。



 彼らは、元々とてものんびりとした優しい性格でしたから、しばらくはあまりの悲しみに何もする気になれませんでした。
 日々、泣いて暮らしていたのですが、ある時、村長がこんなことを言い出しました。



 「のぅ…みんなでこの村を再建しようではないか。
わしらは、この村が好きじゃった。
このままではあまりに悲しい。
わしらにどこまで出来るかわからんが、皆で作り直そうではないか。」



 反対する者はいませんでした。
 彼らは、村のがらくたや亡骸を片付け、土を耕し、家を建て直しました。
 少しずつ…少しずつ…彼らは寝る暇も惜しんで、真面目に村の再建に頑張りました。
その甲斐あって、何年もかかった後にようやく村はよみがえりました。

 
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