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再会

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「アルグ、ちょっと良いか?」

「はい、何ですか、アズラエルさん。」

「ここを見てほしいんだが…」

「リュタンに伝わる宝石のことですね。」

アルグは、アズラエルの指し示したページに熱心に目を通した。



「アズラエルさん、このページのどこが気になるのですか?
ボクには特におかしな所は感じられないのですが…」

「宝石についての記述だ。
これが最古の資料だということだが、この時には宝石の名前が書いてない。
おそらくこの後で付けられたのではないかと思うのだ。
アルグ、ここには『燃えるさかる炎のような宝石』『涼しげな透明感のある宝石』『海の底のような宝石」と記述してある。
これは、順番に『風に眠る炎』『海に眠る雫』『暗闇に眠る星』のことだと思うのだが…
アルグ、君は海と聞いてどんな色を思い浮かべる?」

「海ですか?そうですね…
やっぱり青または藍色でしょうか?」

「そうだろう?
それなのになぜ『暗闇に眠る星』と呼ばれているのだろう?」

「しかし、海の底…つまりは深海ですから、暗いということで暗闇という表現もおかしくはないんじゃないでしょうか?」

「そうか…では、特におかしいというわけではないということか…」

その言葉にアズラエルは腕を組んで黙り込む。



「……でも、確かに少しおかしな宝石ではあるのですよ。」

「おかしい……?」

「ええ…暗闇に眠る星は、その行方がよくわからない時期があったようなのです。
人間の世界に出回ってしまったという説もあります。
でも、いつの間にかリュタンの村に戻っていたのです。
戻っていたのか、最初から出てはいなかったのか、とにかく謎の多い宝石なのですよ。」

「そうか…」



「よぉ、おまえら、まだ調べものやってるのか?
ずっとこんな所にいたんじゃ、そのうち身体にカビが生えるぞ。」

静かな資料室に突如響いた甲高い声に、二人は同時に振り向いた。



「おじさん、またひやかしですか…
僕達は、真面目に調べてるんですから、邪魔しないで下さいよ。」

「おまえ達もいいかげん心配性っていうか、しつこいっていうか…
あれから何年経ってると思ってるんだ?
ルシファーが生きてるのなら、もうとっくにボク達の前に現れてるさ。」
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