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泉の精霊Ⅲ
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「何を言ってるんだい。
母さんは大好きな父さんと一緒になれて…そりゃああんなに早くに別れることになったのは残念だったけど、その代わり、おまえという宝物を授けてもらった。
どんなに疲れて帰って来ても、おまえの顔を見たら疲れなんて吹き飛んでしまったよ。
働く事が辛いなんて考えたこともなかった…
ただ、おまえには苦労ばかりをさせてしまった。
しかも、最後の最後には私のせいでこんなことになってしまった。
それだけが心残りだよ。
マルク、ごめんよ…おまえを守ってやることが出来なくて、本当にごめんよ…」
「母さん!」
マルクは母の胸に飛び込んだ。
母親よりほんの少し背の高くなったマルクが、母の胸でまるで子供のように泣いた…
「マルク…初めてだね。
おまえがこんなに泣いたのは…今までずっと我慢してたんだね…
泣きたくても我慢してたんだね…辛かったね…偉かったね…」
母親は、マルクの背中をさすりながら、優しく囁いた。
「……死者も生者も人を想う気持ちは変わらない…か…」
母子を見つめながら、フォルテュナは白羽扇をゆっくりと動かす。
「マルク…そろそろ、行こうか…
私達が来るのが遅いから、父さんやお祖母ちゃんがきっと心配してるよ。」
「……そうだね。
……ねぇ、母さん、父さんは大きくなった僕を見たらびっくりするかな?」
「しないよ…
父さんはずっとおまえの傍でおまえの成長を見守って来ただろうからね。」
「そっか…きっとそうだね…」
少年はそう言うと、フォルテュナの方に向き直った。
「フォルテュナ様、お騒がせ致しました。
ここに来たおかげで、僕、やっと楽になれました。
…僕の人生は哀しい結末だったかもしれないけど、不思議な位、想い遺す事がないんです。」
「母親と一緒に行くなんて、君は本当に甘えん坊だね…」
「良いんですよ。
この子は小さい頃から私のことを気遣って、甘えることもなかったんですから。」
「母親がそんなに過保護じゃ、甘えん坊になるのも当然だね…」
「子供が親に甘えて、何が悪いんです…?」
その言葉に母子は顔を見合わせて微笑んだ。
「フォルテュナ様、お世話になりました。
じゃあ、僕達そろそろ行きます…」
フォルテュナは黙って頷いた。
フォルテュナの見守る中、二人は眩い光に包まれながら、天へと上って行く…
ゆっくり…ゆっくりと…
(死のみが、あの母子に幸せをもたらすものだったということか…
あの母子の人生とは何だったのか…
この世での苦しみがあったこそ…彼らは幸せを手に入れた…
闇を知らなければ、光を知ることもない…
……哀し過ぎる皮肉だな…)
フォルテュナは、ゆらゆら揺らめく泉の水面をみつめながら、心の中で祈りを唱えた。
次の世では、あの母子が泉の水等欲しがることもないような、幸せな人生が送れますようにと…
母さんは大好きな父さんと一緒になれて…そりゃああんなに早くに別れることになったのは残念だったけど、その代わり、おまえという宝物を授けてもらった。
どんなに疲れて帰って来ても、おまえの顔を見たら疲れなんて吹き飛んでしまったよ。
働く事が辛いなんて考えたこともなかった…
ただ、おまえには苦労ばかりをさせてしまった。
しかも、最後の最後には私のせいでこんなことになってしまった。
それだけが心残りだよ。
マルク、ごめんよ…おまえを守ってやることが出来なくて、本当にごめんよ…」
「母さん!」
マルクは母の胸に飛び込んだ。
母親よりほんの少し背の高くなったマルクが、母の胸でまるで子供のように泣いた…
「マルク…初めてだね。
おまえがこんなに泣いたのは…今までずっと我慢してたんだね…
泣きたくても我慢してたんだね…辛かったね…偉かったね…」
母親は、マルクの背中をさすりながら、優しく囁いた。
「……死者も生者も人を想う気持ちは変わらない…か…」
母子を見つめながら、フォルテュナは白羽扇をゆっくりと動かす。
「マルク…そろそろ、行こうか…
私達が来るのが遅いから、父さんやお祖母ちゃんがきっと心配してるよ。」
「……そうだね。
……ねぇ、母さん、父さんは大きくなった僕を見たらびっくりするかな?」
「しないよ…
父さんはずっとおまえの傍でおまえの成長を見守って来ただろうからね。」
「そっか…きっとそうだね…」
少年はそう言うと、フォルテュナの方に向き直った。
「フォルテュナ様、お騒がせ致しました。
ここに来たおかげで、僕、やっと楽になれました。
…僕の人生は哀しい結末だったかもしれないけど、不思議な位、想い遺す事がないんです。」
「母親と一緒に行くなんて、君は本当に甘えん坊だね…」
「良いんですよ。
この子は小さい頃から私のことを気遣って、甘えることもなかったんですから。」
「母親がそんなに過保護じゃ、甘えん坊になるのも当然だね…」
「子供が親に甘えて、何が悪いんです…?」
その言葉に母子は顔を見合わせて微笑んだ。
「フォルテュナ様、お世話になりました。
じゃあ、僕達そろそろ行きます…」
フォルテュナは黙って頷いた。
フォルテュナの見守る中、二人は眩い光に包まれながら、天へと上って行く…
ゆっくり…ゆっくりと…
(死のみが、あの母子に幸せをもたらすものだったということか…
あの母子の人生とは何だったのか…
この世での苦しみがあったこそ…彼らは幸せを手に入れた…
闇を知らなければ、光を知ることもない…
……哀し過ぎる皮肉だな…)
フォルテュナは、ゆらゆら揺らめく泉の水面をみつめながら、心の中で祈りを唱えた。
次の世では、あの母子が泉の水等欲しがることもないような、幸せな人生が送れますようにと…
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