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魔導士
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「こんな所で立ち話もなんだから、あそこの宿屋で飯でも食べながら話そう。
あんたら、どうせ宿屋に行く所だったんだろ?」
「……どうしてそう思う!?」
にわかにウォルトの表情が強張り、その右手が短剣の柄を握る。
アレクはそれに気付き、ウォルトの右手を服の上からそっと押さえた。
「そんな物騒なものは必要ない。
俺はあんたらに良いニュースを運んで来たんだ。」
アレクはそう言って、出来得る限りの明るい笑顔を浮かべたが、それでもウォルトの表情が変わることはなかった。
「そう怖い顔すんなって。
本当に良いニュースなんだから。
さ、行こうぜ!」
アレクはウォルトの背中を軽く叩き、二人の前を歩き始めた。
二人は警戒をしながらも、意味ありげなアレクの言葉を無視することは出来ず、彼の後に続いた。
*
夕食にはまだ少し早い時間のせいか、宿屋の食堂はまだ客もまばらだった。
三人は人目につきにくい一番奥のテーブルに席を取る。
「じゃあ、早速その良いニュースっていうのを聞かせてもらおうか。」
ウォルトの切り口上に苦笑しながら、アレクが答えた。
「ダニエルは無事だ。
体調も少しずつ回復している。」
余裕たっぷりに告げたその言葉に対する二人の反応は、アレクが考えていたものとは少し違ったものだった。
「何のことだ?」
マウリッツがアレクに問いかけた瞬間、隣のウォルトが何かを感じた様子でマウリッツの耳元に何事かを囁いた。
それを聞いたマウリッツは小さく頷く。
「ダニエルについて教えてもらおう。
彼の容姿や服装、なんでも良い。」
「わかったよ。」
アレクは肩をすくめ、ダニエルについて話し始めた。
それを聞くごとに二人の表情は驚いたような顔に変わっていく。
大方の説明をした頃、ウォルトとマウリッツは再び囁き声で会話を始めた。
ウォルトはディオニシスが名前を偽っているのではないかと考えたのだ。
西側と東側ではほとんど情報は流れていないが、商人等を介し、身分の高いディオニシスの名前くらいは知られているかもしれない。
そう考えたからこそ、自分もマウリッツの名前を偽ってダモンに紹介した。
ならば、当然、ディオニシスもそうするかもしれないとウォルトは考えたのだ。
あんたら、どうせ宿屋に行く所だったんだろ?」
「……どうしてそう思う!?」
にわかにウォルトの表情が強張り、その右手が短剣の柄を握る。
アレクはそれに気付き、ウォルトの右手を服の上からそっと押さえた。
「そんな物騒なものは必要ない。
俺はあんたらに良いニュースを運んで来たんだ。」
アレクはそう言って、出来得る限りの明るい笑顔を浮かべたが、それでもウォルトの表情が変わることはなかった。
「そう怖い顔すんなって。
本当に良いニュースなんだから。
さ、行こうぜ!」
アレクはウォルトの背中を軽く叩き、二人の前を歩き始めた。
二人は警戒をしながらも、意味ありげなアレクの言葉を無視することは出来ず、彼の後に続いた。
*
夕食にはまだ少し早い時間のせいか、宿屋の食堂はまだ客もまばらだった。
三人は人目につきにくい一番奥のテーブルに席を取る。
「じゃあ、早速その良いニュースっていうのを聞かせてもらおうか。」
ウォルトの切り口上に苦笑しながら、アレクが答えた。
「ダニエルは無事だ。
体調も少しずつ回復している。」
余裕たっぷりに告げたその言葉に対する二人の反応は、アレクが考えていたものとは少し違ったものだった。
「何のことだ?」
マウリッツがアレクに問いかけた瞬間、隣のウォルトが何かを感じた様子でマウリッツの耳元に何事かを囁いた。
それを聞いたマウリッツは小さく頷く。
「ダニエルについて教えてもらおう。
彼の容姿や服装、なんでも良い。」
「わかったよ。」
アレクは肩をすくめ、ダニエルについて話し始めた。
それを聞くごとに二人の表情は驚いたような顔に変わっていく。
大方の説明をした頃、ウォルトとマウリッツは再び囁き声で会話を始めた。
ウォルトはディオニシスが名前を偽っているのではないかと考えたのだ。
西側と東側ではほとんど情報は流れていないが、商人等を介し、身分の高いディオニシスの名前くらいは知られているかもしれない。
そう考えたからこそ、自分もマウリッツの名前を偽ってダモンに紹介した。
ならば、当然、ディオニシスもそうするかもしれないとウォルトは考えたのだ。
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