78~運命のカード

ルカ(聖夜月ルカ)

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 「クレタス…いるのか?
クレタス……」

 「ネストル様、ここです!」

 崖の手前の木陰からにこやかな顔のクレタスが顔をのぞかせた。



 「すまなかったな、こんな時間に…」

 「いえ、そんなこと…」

 「誰にも気付かれなかっただろうな?」

 「もちろんです!」

 「そうか…それは良かった。
 他の者に聞かれてはまずい話だからな。」

ネストルは、響きのある低い声でそう言った。



 「おぉ、今夜は月が美しいな。」

ネストルは空を見上げながら、崖の先端に向かって歩き出した。
クレタスは黙ってその後を着いて行く。



 「実はな…クレタス……」

ネストルは、振り返り、にこやかな顔でクレタスの傍に近付いた。



 「……うっ……」

 期待に胸を躍らせていたクレタスの表情が、にわかに苦痛に歪んだものに一変した。



 「ネ、ネストル様…な、なぜ……」

そう話すクレタスの口からは赤い血が流れていた。



 「手間を取らせやがって…」

ネストルは、力を込めて短剣を引き抜き、クレタスの着ていたローブで刃先の血を拭った。



 「……あとのことは心配するな。」

クレタスの耳元でそう囁くと、ネストルは、クレタスの身体を崖から蹴り落とした。



 (……下手な忠義心は持たないことだな。
 赤い雲のことをリガスに知られては困るのだ。)



ネストルは、今再び、頭上の月を見上げ、何事もなかったかのように宿舎への道を戻り始めた。
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