あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
236 / 406
クリスマスプレゼントは靴下に

しおりを挟む




「ええ、ええ、どうせ私はおばばですよ。
それがどうしたってんだ!
 生きてりゃ、誰だって年とるんだよ!
おめぇらも、すぐにばあさんになるんだからな!
そうなった時に、若い子にさんざん陰口言われろってんだ!」



 憂さ晴らしには飲むのが一番だ。
だけど、居酒屋は若いグループ客がほとんどで、そういう奴らを見ていたら、前島やら坂本達のことが思い出されて不愉快になって来て、私はその店を飛び出した。
どこか、もっと人が少なくて静かな店で飲み直しだ。
そういう店はたいてい目立たない路地にひっそりとあるもの…
だから、居酒屋を出てからはとにかく路地を見て歩いた。
このあたりのことは割りと知ってたはずだけど、こんなに路地があることは知らなかった。
いつの間にか半ば迷子状態…
開店してるんだかしてないんだかよくわからない、ちょっとあやしげな店もあって、きっと、素面の時の私ならこんな所からは早く出ようと思うんだろうけど、酔ってたせいか、そんなことも特になんとも思わなかった。



(あれ……?)



ほろ酔い加減の私の目に、古ぼけた小さな飲み屋の看板が映った。



『しあわせ屋』



あまりにもベタなその屋号に、思わず私は失笑した。



「しあわせ屋?
よ~し!それなら、私も幸せにしてもらおうじゃないの!」



私の口が勝手にそんなことをつぶやき、店の扉をがらがらと開いた。



「いらっしゃい。」



 小さなカウンターの中には、白いひげを生やした小柄なおじいさんがいて、まるで仏様みたいな優しい笑顔で私を迎えてくれた。
その笑顔を見ているだけで、私はなんだか胸がいっぱいになって涙がこぼれそうになってきた。



(いかんいかん!病んでるぞ、私……
おやじの顔見ただけで涙ぐむなんて、これはかなり重症だ!)



「お酒ちょうだい!
それと、なにかおいしいもの。」

「はい。」



店の中には私しかいなかった。
まぁ、確かに外観は良いとは言えないけど…もちろん、中だって、間違ってもおしゃれとは言えないし、特別、綺麗ってわけでもないけど、それでも、なんていうか、すっごく落ち着く……
知り合いの家にでも遊びに来たような親しみを感じる。
 店のおじいさんも泣きたくなる程優しそうな顔してるし、くだらない話でもいやがらずに聞いてもらえそうだ。
それにしても、こういう雰囲気はけっこう好まれると思うんだけど、なんでこんなにガラガラなんだろう……?
あ、もしかしたら、すっごく料理がまずいとか!?
……ま、良いや。
今日は、飲めれば良いんだから!
まずい料理でもなんでも来いってもんだ。
 山ほど飲んで、いやなことなんて全部忘れてやるんだから……! 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...