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クリスマスプレゼントは靴下に
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(悪い事の後には良いことがあるっていうのは本当だな…)
外はいつの間にか明るくなり始めていた。
そんなに長居をしたのかと、ちょっとびっくりしたけど…ま、いっか。
今日は仕事も休んでやる!
良いんだ。
有給はまだまだいっぱい残ってるんだから。
今まで馬鹿みたいに働き続けて来たけど、今日はゆっくり休んで好きなことしよう。
それにしても、感じの良いおやじさんだったなぁ……
私、昔からどうもおじ専の気があるっていうか……
男性は、若い子よりも、大人の方が好きなんだ。
っていうか、若い子にはときめいたことがない。
だから、あんな馬鹿前島に惚れるわけがないっつーの!!
あぁ、思い出しても腹が立つ…
私の好きなタイプはさっきのお店のおやじさんみたいに、笑顔がとっても穏やかで…優しくて、頭が良くてイケメンで、だけど、どこかちょっとおトボケなところがあって、私がついてなきゃだめ!って思わせてくれる人で、なのに、頼り甲斐はある人で……
こんなことを言うと、「そんな人なんて、いない、いない!」って笑われるのがオチなんだけど、理想くらい何を言おうと勝手でしょ。
(そうだ…考えてみれば、こんな話を最後にしたのは確か大学に入ったばかりの頃……
それ以来は、そんな話さえしたことなかった。)
……枯れてるなぁ。
でも、私にもいろいろと事情があったんだもん。
普通の女の子みたいに、恋愛に浮かれてる暇なんてなかったんだもん。
そう思うと、いろいろと苦しかったあの頃のことが脳裏をかすめた。
あれは大学二回生の夏のことだった。
父さんが倒れたことが始まりだった。
それまでの私は特に満ち足りてはいなかったとはいえ、大きな不満のようなものもなく、みんなと同じように楽しい大学生活を過ごしてた。
父さんが倒れた時だって、夏の疲れでも出たんだろうってごく軽く考えてた。
だけど、そうじゃなかった。
父さんの病気はとても重いもので、それは時の流れと共に痩せ衰えている父さんを見ればすぐにわかった。
父さんはふさぎ込み、どんなに気を遣っても、私達にあたり続けた。
今まで病気一つしたことがない父さんだったから、きっと、ショックが大きかったんだろうと思う。
精神的にも肉体的にも追い詰められる日々…その上、一家の大黒柱が倒れたことで生活は困窮した。
私は少しでも家計の足しになれば…と、バイトを始めた。
だけど、そんなことくらいでは足しになんてならなかった。
三回生になってしばらく経った頃…私は大学を辞めた。
あと少しだから卒業まで通ったら…?と、母さんは言ってくれたけど、そんなゆとりがないことは私にもよくわかっていたから、諦めた。
本当は悔いがあった…
せっかく頑張って勉強した大学だったのに…それに、みんなの手前もある。
経済的に苦しいから…なんて言うのは恥ずかしかったから、みんなには大学生活がつまらないとかなんとか心にもない嘘を吐いた。
それからの私はとにかくがむしゃらに働いた。
今までのようにおしゃれをしたり、おいしいものを食べに行くこともなく、
職場の人とも関わることなく、ただただ機械のように働いた。
働くことで、なんとか自分を保っていたとも言える。
やがて、三年後…父さんは亡くなり、治療にかかった借金だけが残された。
父さんが亡くなった時は悲しいのかどうかもよくわからなかった。
ただ、心の中にすごく深くて大きな穴がぽっかりと開いたような感覚を感じたことだけ、はっきりと覚えてる。
それからは母さんと支えあって、どうにか借金を返して…
これからは、少し楽になるねって話したその晩に、母さんは呆気なく逝ってしまった。
目の前の現実がなかなか受け入れられなくて…
何か月かは、まるで魂の抜け殻みたいになっていて…
私は、生きる気力さえなくしかけてた。
でも、それを救ってくれたのはやっぱり仕事だった。
突き動かされるように働いて…いつしかその頑張りを認めてもらえて、気が付くと、それなりのポストに就いていて……
(あぁ、やめたやめた!)
昔のことなんて思い出しても何も良いことなんてない。
そう…過去は振り返らないに限る!
それより、今日は良いことがあったんだから、もっと、楽しいことでも考えよう!
そうだ…一眠りしたら、ひさしぶりに美容院でも行ってこようかな。
そして、ちょっとましな服でも買って…そういえば、最近、買い物もしてなかった。
おしゃれでもしたら、私の理想の人に出会えるかもしれない!
……なぁ~んてね。
それにしても、ここの路地はわかりにくい。
酔ってたこともあって道なんて全然覚えてない。
だけど、路地なんてものは適当に歩いてたらいつかは出られると軽く考えてたけど、ちっとも出られないのはどういうこと…!?
誰かに道を聞きたいけど、そういえばここまで誰とも出会ってないし、お店もどこも開いてない。
だんだんと不安になりつつ、私は曲がり角を曲がった。
(悪い事の後には良いことがあるっていうのは本当だな…)
外はいつの間にか明るくなり始めていた。
そんなに長居をしたのかと、ちょっとびっくりしたけど…ま、いっか。
今日は仕事も休んでやる!
良いんだ。
有給はまだまだいっぱい残ってるんだから。
今まで馬鹿みたいに働き続けて来たけど、今日はゆっくり休んで好きなことしよう。
それにしても、感じの良いおやじさんだったなぁ……
私、昔からどうもおじ専の気があるっていうか……
男性は、若い子よりも、大人の方が好きなんだ。
っていうか、若い子にはときめいたことがない。
だから、あんな馬鹿前島に惚れるわけがないっつーの!!
あぁ、思い出しても腹が立つ…
私の好きなタイプはさっきのお店のおやじさんみたいに、笑顔がとっても穏やかで…優しくて、頭が良くてイケメンで、だけど、どこかちょっとおトボケなところがあって、私がついてなきゃだめ!って思わせてくれる人で、なのに、頼り甲斐はある人で……
こんなことを言うと、「そんな人なんて、いない、いない!」って笑われるのがオチなんだけど、理想くらい何を言おうと勝手でしょ。
(そうだ…考えてみれば、こんな話を最後にしたのは確か大学に入ったばかりの頃……
それ以来は、そんな話さえしたことなかった。)
……枯れてるなぁ。
でも、私にもいろいろと事情があったんだもん。
普通の女の子みたいに、恋愛に浮かれてる暇なんてなかったんだもん。
そう思うと、いろいろと苦しかったあの頃のことが脳裏をかすめた。
あれは大学二回生の夏のことだった。
父さんが倒れたことが始まりだった。
それまでの私は特に満ち足りてはいなかったとはいえ、大きな不満のようなものもなく、みんなと同じように楽しい大学生活を過ごしてた。
父さんが倒れた時だって、夏の疲れでも出たんだろうってごく軽く考えてた。
だけど、そうじゃなかった。
父さんの病気はとても重いもので、それは時の流れと共に痩せ衰えている父さんを見ればすぐにわかった。
父さんはふさぎ込み、どんなに気を遣っても、私達にあたり続けた。
今まで病気一つしたことがない父さんだったから、きっと、ショックが大きかったんだろうと思う。
精神的にも肉体的にも追い詰められる日々…その上、一家の大黒柱が倒れたことで生活は困窮した。
私は少しでも家計の足しになれば…と、バイトを始めた。
だけど、そんなことくらいでは足しになんてならなかった。
三回生になってしばらく経った頃…私は大学を辞めた。
あと少しだから卒業まで通ったら…?と、母さんは言ってくれたけど、そんなゆとりがないことは私にもよくわかっていたから、諦めた。
本当は悔いがあった…
せっかく頑張って勉強した大学だったのに…それに、みんなの手前もある。
経済的に苦しいから…なんて言うのは恥ずかしかったから、みんなには大学生活がつまらないとかなんとか心にもない嘘を吐いた。
それからの私はとにかくがむしゃらに働いた。
今までのようにおしゃれをしたり、おいしいものを食べに行くこともなく、
職場の人とも関わることなく、ただただ機械のように働いた。
働くことで、なんとか自分を保っていたとも言える。
やがて、三年後…父さんは亡くなり、治療にかかった借金だけが残された。
父さんが亡くなった時は悲しいのかどうかもよくわからなかった。
ただ、心の中にすごく深くて大きな穴がぽっかりと開いたような感覚を感じたことだけ、はっきりと覚えてる。
それからは母さんと支えあって、どうにか借金を返して…
これからは、少し楽になるねって話したその晩に、母さんは呆気なく逝ってしまった。
目の前の現実がなかなか受け入れられなくて…
何か月かは、まるで魂の抜け殻みたいになっていて…
私は、生きる気力さえなくしかけてた。
でも、それを救ってくれたのはやっぱり仕事だった。
突き動かされるように働いて…いつしかその頑張りを認めてもらえて、気が付くと、それなりのポストに就いていて……
(あぁ、やめたやめた!)
昔のことなんて思い出しても何も良いことなんてない。
そう…過去は振り返らないに限る!
それより、今日は良いことがあったんだから、もっと、楽しいことでも考えよう!
そうだ…一眠りしたら、ひさしぶりに美容院でも行ってこようかな。
そして、ちょっとましな服でも買って…そういえば、最近、買い物もしてなかった。
おしゃれでもしたら、私の理想の人に出会えるかもしれない!
……なぁ~んてね。
それにしても、ここの路地はわかりにくい。
酔ってたこともあって道なんて全然覚えてない。
だけど、路地なんてものは適当に歩いてたらいつかは出られると軽く考えてたけど、ちっとも出られないのはどういうこと…!?
誰かに道を聞きたいけど、そういえばここまで誰とも出会ってないし、お店もどこも開いてない。
だんだんと不安になりつつ、私は曲がり角を曲がった。
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