147 / 277
近くて遠い想い人
side アドルフ
しおりを挟む
「アドルフ様……」
熱のこもった吐息と共にしなだれかかる汗臭い体に、私は反射的に身体を起した。
「少し休ませてくれ。」
「……はい。」
最近のジゼルは、まさに盛りのついた雌猫だ。
恥じらいの欠片も持ち合わせてはいない。
私に愛されていると勘違いし、一晩に何度も私を求めて来る。
あれからもう三か月が経とうとしているのに、ジゼルにはまだ子が出来た兆候もない。
何とも忌々しいことだ。
しかし、三か月が経ったということは、あと三か月でアリシアと会えるということでもある。
私はそれだけを心の支えに、おぞましい悪夢のようなジゼルとの営みを乗り越えて来た。
早く子を孕んでくれとそれだけを願いながら…
焦っても仕方がない事だが、子が出来た兆候が表れれば、それを口実にジゼルと離れることが出来る。
だから、どうしても焦ってしまう。
愛情の欠片もない女を抱くことは、それほどまでに辛いことなのだ。
ましてや、私にはアリシアという想い人がいるのだから…
塔でのアリシアの様子はようとしてわからない。
訊ねても「お元気です。」という一言で済まされてしまう。
側室になることは決まっているというのに、会うことさえ許されない。
なんと哀しいことか…
そういえば、リュシアンは最近女と遊ぶことをやめ、歌ばかり歌っている。
リュートを習い始めたとかいう噂も聞いた。
一体、何を考えているのやら…
城を出て、吟遊詩人にでもなるつもりか…まったくたわけた真似を…
あやつがあんな調子だから、私がこんなに苦労をするのだ。
本当にあいつは気楽で羨ましい。
(うっ……)
また頭痛の発作だ。
このところ、以前にも増して頭痛の回数が増えるようになった。
きっと、ジゼルのせいだろう。
常に我慢を強いられているから、心の負担が痛みに変わっているのかもしれない。
「ジゼル、すまないが、今夜はもう無理そうだ。
頭が痛くてな…」
そう言って、私はいつもの丸薬を飲み込んだ。
「そう…ですか。わかりました。」
不服そうな顔をしながらも、ジゼルは納得してくれた。
私は、気分がほんの少し軽くなるのを感じた。
熱のこもった吐息と共にしなだれかかる汗臭い体に、私は反射的に身体を起した。
「少し休ませてくれ。」
「……はい。」
最近のジゼルは、まさに盛りのついた雌猫だ。
恥じらいの欠片も持ち合わせてはいない。
私に愛されていると勘違いし、一晩に何度も私を求めて来る。
あれからもう三か月が経とうとしているのに、ジゼルにはまだ子が出来た兆候もない。
何とも忌々しいことだ。
しかし、三か月が経ったということは、あと三か月でアリシアと会えるということでもある。
私はそれだけを心の支えに、おぞましい悪夢のようなジゼルとの営みを乗り越えて来た。
早く子を孕んでくれとそれだけを願いながら…
焦っても仕方がない事だが、子が出来た兆候が表れれば、それを口実にジゼルと離れることが出来る。
だから、どうしても焦ってしまう。
愛情の欠片もない女を抱くことは、それほどまでに辛いことなのだ。
ましてや、私にはアリシアという想い人がいるのだから…
塔でのアリシアの様子はようとしてわからない。
訊ねても「お元気です。」という一言で済まされてしまう。
側室になることは決まっているというのに、会うことさえ許されない。
なんと哀しいことか…
そういえば、リュシアンは最近女と遊ぶことをやめ、歌ばかり歌っている。
リュートを習い始めたとかいう噂も聞いた。
一体、何を考えているのやら…
城を出て、吟遊詩人にでもなるつもりか…まったくたわけた真似を…
あやつがあんな調子だから、私がこんなに苦労をするのだ。
本当にあいつは気楽で羨ましい。
(うっ……)
また頭痛の発作だ。
このところ、以前にも増して頭痛の回数が増えるようになった。
きっと、ジゼルのせいだろう。
常に我慢を強いられているから、心の負担が痛みに変わっているのかもしれない。
「ジゼル、すまないが、今夜はもう無理そうだ。
頭が痛くてな…」
そう言って、私はいつもの丸薬を飲み込んだ。
「そう…ですか。わかりました。」
不服そうな顔をしながらも、ジゼルは納得してくれた。
私は、気分がほんの少し軽くなるのを感じた。
0
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
【完結】これは紛うことなき政略結婚である
七瀬菜々
恋愛
没落寸前の貧乏侯爵家の令嬢アンリエッタ・ペリゴールは、スラム街出身の豪商クロード・ウェルズリーと結婚した。
金はないが血筋だけは立派な女と、金はあるが賤しい血筋の男。
互いに金と爵位のためだけに結婚した二人はきっと、恋も愛も介在しない冷めきった結婚生活を送ることになるのだろう。
アンリエッタはそう思っていた。
けれど、いざ新婚生活を始めてみると、何だか想像していたよりもずっと甘い気がして……!?
*この物語は、今まで顔を合わせれば喧嘩ばかりだった二人が夫婦となり、紆余曲折ありながらも愛と絆を深めていくただのハイテンションラブコメ………になる予定です。
ーーーーーーーーーー
*主要な登場人物*
○アンリエッタ・ペリゴール
いろんな不幸が重なり落ちぶれた、貧乏侯爵家の一人娘。意地っ張りでプライドの高いツンデレヒロイン。
○クロード・ウェルズリー
一代で莫大な富を築き上げた豪商。生まれは卑しいが、顔がよく金持ち。恋愛に関しては不器用な男。
○ニコル
アンリエッタの侍女。
アンリエッタにとっては母であり、姉であり、友である大切な存在。
○ミゲル
クロードの秘書。
優しそうに見えて辛辣で容赦がない性格。常にひと言多い。
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
転生令嬢と王子の恋人
ねーさん
恋愛
ある朝、目覚めたら、侯爵令嬢になっていた件
って、どこのラノベのタイトルなの!?
第二王子の婚約者であるリザは、ある日突然自分の前世が17歳で亡くなった日本人「リサコ」である事を思い出す。
麗しい王太子に端整な第二王子。ここはラノベ?乙女ゲーム?
もしかして、第二王子の婚約者である私は「悪役令嬢」なんでしょうか!?
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる