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デジカメ(ふたご座)

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「あや…ごめんよ…
気付いてやれなくて…」

拓也は、あやの墓前で手を合わせ、頭を下げた。



ある時期から、あやの様子が急変した。
以前のように笑うことがなくなり、話しかけてもどこか魂の抜けたようにぼーっとすることが増えた。

そのうちに体調が良くないからと、毎日欠かさずに来ていた見舞いに来ない日が少しずつ増えていった。

ある日、そんなあやの様子を心配した拓也が家に電話をかけると、誰も出ない。
あやの仕事先に電話をすると数日前から休んでいるとのこと。
さすがに心配になった拓也は、友人に頼み、家に向かってもらった。
そして、そこで、冷たくなったあやが発見された。



拓也は、度重なる検査の結果、宣告された難病ではなく、違う場所に真の原因が発見された。
あやのことで、拓也は精神的に大きなダメージを受けたが、身体は適切な治療により順調に回復し、個室から大部屋に移り、ついには退院した。



「あや…僕はこんなに元気になったよ。
これも君が献身的に僕に尽くしてくれたおかげだ。
だけど、君がそんなに無理してたなんて…
もう少し早く僕が君の異変に気付いていたら…また、二人で楽しく暮らせたのに…
本当にごめんよ…」

拓也の瞳を、熱い後悔の涙が伝った。


 
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