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scene 7
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「オルジェは自分の中の悪魔のことも、どうして父親が死んだのかも知りません。あの子が事実を知ったら、自分を責めるだろうとずっと言えずにいたのです…ラグスの死をオルジェは認められず、泣き暮らしていましたから」
それは幼なじみのケイトも知っていた。
この村で数少ない子供の中でも、オルジェは一番の友達だったから…。
いつも元気で走り回っていたオルジェが、父親の死後パタリと姿を見せなくなって随分と心配したものだ。
村の人たちが顔を見に行っても誰にも会おうとせず、あのイアンですら手を焼いていたと聞いた事が記憶の隅に残っている。
「話しかけても返事すらしないオルジェの傍に、ずっといたのはトレルでした。彼もまた、責任を感じていたのでしょう。辛抱強く、オルジェが立ち直る日が来るまで、トレルは傍にいて見守り続けました。そんなある日、私は変化に気づいたのです」
「変化……」
ケイトはイアンの言葉を繰り返し、呟いた。
「明らかなる変化でした。トレルがオルジェと過ごすようになって、周囲の悪魔の存在が消えたのです」
「消えたって…じゃあ、オルジェの中の悪魔も消えたって事か!?」
リンクは怪訝そうな顔をした。
「いいえ、悪魔は相変わらずオルジェの中にいましたよ。だって悪魔は彼の一部なのですから。言葉で表すなら、存在が小さくなった感じでした」
「何で?」
「トレルはオルジェの《鍵》だったんです。そんな存在がいると耳にした事はありましたが、出会ったのは初めてでした。悪魔の力を傍にいるだけで封じる事の出来る者…その存在を《悪魔の鍵》と言うそうです。彼がオルジェの傍にいると、悪魔は力を揮えず眠ってしまったのが何よりの証拠」
ケイトはハッとする。
「もしかして村から居なくなったオルジェの後をトレルに追わせようとしたのは………」
「そういう事です。そして今オルジェの様子がおかしいという事は、トレルと長いこと離れていた為に眠っていた悪魔が目覚めてしまったと考えるのが妥当でしょう」
「あたし……なんてことを」
知らなかったとはいえ、自分が傍にいたいばかりにトレルとオルジェを引き離してしまった事が事態を悪化させてしまった。
(どうしよう………)
ケイトはペタリと床に座り込んだ。
それは幼なじみのケイトも知っていた。
この村で数少ない子供の中でも、オルジェは一番の友達だったから…。
いつも元気で走り回っていたオルジェが、父親の死後パタリと姿を見せなくなって随分と心配したものだ。
村の人たちが顔を見に行っても誰にも会おうとせず、あのイアンですら手を焼いていたと聞いた事が記憶の隅に残っている。
「話しかけても返事すらしないオルジェの傍に、ずっといたのはトレルでした。彼もまた、責任を感じていたのでしょう。辛抱強く、オルジェが立ち直る日が来るまで、トレルは傍にいて見守り続けました。そんなある日、私は変化に気づいたのです」
「変化……」
ケイトはイアンの言葉を繰り返し、呟いた。
「明らかなる変化でした。トレルがオルジェと過ごすようになって、周囲の悪魔の存在が消えたのです」
「消えたって…じゃあ、オルジェの中の悪魔も消えたって事か!?」
リンクは怪訝そうな顔をした。
「いいえ、悪魔は相変わらずオルジェの中にいましたよ。だって悪魔は彼の一部なのですから。言葉で表すなら、存在が小さくなった感じでした」
「何で?」
「トレルはオルジェの《鍵》だったんです。そんな存在がいると耳にした事はありましたが、出会ったのは初めてでした。悪魔の力を傍にいるだけで封じる事の出来る者…その存在を《悪魔の鍵》と言うそうです。彼がオルジェの傍にいると、悪魔は力を揮えず眠ってしまったのが何よりの証拠」
ケイトはハッとする。
「もしかして村から居なくなったオルジェの後をトレルに追わせようとしたのは………」
「そういう事です。そして今オルジェの様子がおかしいという事は、トレルと長いこと離れていた為に眠っていた悪魔が目覚めてしまったと考えるのが妥当でしょう」
「あたし……なんてことを」
知らなかったとはいえ、自分が傍にいたいばかりにトレルとオルジェを引き離してしまった事が事態を悪化させてしまった。
(どうしよう………)
ケイトはペタリと床に座り込んだ。
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