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かくれんぼ
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(う~…さ、寒い…!)
氷みたいに冷たい北風が、落ち葉を舞い踊らせ、私をも突き刺そうとする。
私は立ち止まり、身を強張らせてじっと耐える。
(早く帰って、温かいものでも食べよう…)
そう思う気持ちとは裏腹に、私は家ではなく公園の方に向かっていた。
寒く薄暗い公園には、当然、人っ子ひとりいない。
足元の落ち葉が、かさかさと音を立てる。
私は公園の中の大きな木に向かっていた。
誰もいないことをもう一度確かめて…
「もういいかい?」
私の小さな声は、風の音にかき消される。
「もういいかい?」
さっきより、少しだけ大きな声でそう言って、振り返る。
返事が返ってこないことはわかってるのに…
馬鹿みたい…
思わず、自嘲めいた笑みがこぼれた。
あの時からもう二十年も経ってるのに…
それでも、私はまだ期待している。
いつか、お母さんをみつけられるんじゃないかって…
そう、あれは、私が小学4年生の頃…今日と同じ、北風の吹く寒い日のことだった。
「ねぇ、公園に行かない?」
「えっ!?こんなに寒いのに?」
「温かくしていけば大丈夫だよ。
かくれんぼしようよ!」
お母さんは、私の首にマフラーをぐるぐる巻きにしてくれた。
「最初は、のんちゃんが鬼ね。
良い?出来るだけゆっくり10数えるんだよ?」
「うん、わかった。」
私はお母さんに言われた通り、出来るだけゆっくりと数を数えた。
「……8…9…10!
もういいかい?」
「もういいよ。」の声はなかったけど、10数えたから私は目を開けて振り返った。
「おかあさん、どこ?」
急に得体の知れない胸騒ぎに襲われた。
「おかあさん!おかあさん!」
私は寒い公園でお母さんを捜し続けた。
でも、どこにもおかあさんの姿はなく…
そのうちに暗くなって来て、私はどうしようもなく心細くて、泣きながら家に戻った。
なぜお母さんが家を出たのか、それはいまだにわからない。
お父さんは元々寡黙な人で、いまだに何も話してくれないから。
手がかりひとつ残さずに、お母さんはいなくなってしまった。
もしかしたら、北風に連れ去られてしまったんじゃないか…
そんな馬鹿馬鹿しいことを考えたりもする。
もしもそうならば…またいつか、北風がおかあさんをこの公園に連れて来てくれるんじゃないか…
そんな夢みたいなことを考えながら、私は寒い公園を後にした。
氷みたいに冷たい北風が、落ち葉を舞い踊らせ、私をも突き刺そうとする。
私は立ち止まり、身を強張らせてじっと耐える。
(早く帰って、温かいものでも食べよう…)
そう思う気持ちとは裏腹に、私は家ではなく公園の方に向かっていた。
寒く薄暗い公園には、当然、人っ子ひとりいない。
足元の落ち葉が、かさかさと音を立てる。
私は公園の中の大きな木に向かっていた。
誰もいないことをもう一度確かめて…
「もういいかい?」
私の小さな声は、風の音にかき消される。
「もういいかい?」
さっきより、少しだけ大きな声でそう言って、振り返る。
返事が返ってこないことはわかってるのに…
馬鹿みたい…
思わず、自嘲めいた笑みがこぼれた。
あの時からもう二十年も経ってるのに…
それでも、私はまだ期待している。
いつか、お母さんをみつけられるんじゃないかって…
そう、あれは、私が小学4年生の頃…今日と同じ、北風の吹く寒い日のことだった。
「ねぇ、公園に行かない?」
「えっ!?こんなに寒いのに?」
「温かくしていけば大丈夫だよ。
かくれんぼしようよ!」
お母さんは、私の首にマフラーをぐるぐる巻きにしてくれた。
「最初は、のんちゃんが鬼ね。
良い?出来るだけゆっくり10数えるんだよ?」
「うん、わかった。」
私はお母さんに言われた通り、出来るだけゆっくりと数を数えた。
「……8…9…10!
もういいかい?」
「もういいよ。」の声はなかったけど、10数えたから私は目を開けて振り返った。
「おかあさん、どこ?」
急に得体の知れない胸騒ぎに襲われた。
「おかあさん!おかあさん!」
私は寒い公園でお母さんを捜し続けた。
でも、どこにもおかあさんの姿はなく…
そのうちに暗くなって来て、私はどうしようもなく心細くて、泣きながら家に戻った。
なぜお母さんが家を出たのか、それはいまだにわからない。
お父さんは元々寡黙な人で、いまだに何も話してくれないから。
手がかりひとつ残さずに、お母さんはいなくなってしまった。
もしかしたら、北風に連れ去られてしまったんじゃないか…
そんな馬鹿馬鹿しいことを考えたりもする。
もしもそうならば…またいつか、北風がおかあさんをこの公園に連れて来てくれるんじゃないか…
そんな夢みたいなことを考えながら、私は寒い公園を後にした。
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