1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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かくれんぼ

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(う~…さ、寒い…!)



 氷みたいに冷たい北風が、落ち葉を舞い踊らせ、私をも突き刺そうとする。
 私は立ち止まり、身を強張らせてじっと耐える。



 (早く帰って、温かいものでも食べよう…)



そう思う気持ちとは裏腹に、私は家ではなく公園の方に向かっていた。
 寒く薄暗い公園には、当然、人っ子ひとりいない。



 足元の落ち葉が、かさかさと音を立てる。
 私は公園の中の大きな木に向かっていた。



 誰もいないことをもう一度確かめて…



「もういいかい?」



 私の小さな声は、風の音にかき消される。



 「もういいかい?」



さっきより、少しだけ大きな声でそう言って、振り返る。



 返事が返ってこないことはわかってるのに…
馬鹿みたい…
思わず、自嘲めいた笑みがこぼれた。



あの時からもう二十年も経ってるのに…
それでも、私はまだ期待している。
いつか、お母さんをみつけられるんじゃないかって…



そう、あれは、私が小学4年生の頃…今日と同じ、北風の吹く寒い日のことだった。



 「ねぇ、公園に行かない?」

 「えっ!?こんなに寒いのに?」

 「温かくしていけば大丈夫だよ。
かくれんぼしようよ!」



お母さんは、私の首にマフラーをぐるぐる巻きにしてくれた。



 「最初は、のんちゃんが鬼ね。
 良い?出来るだけゆっくり10数えるんだよ?」

 「うん、わかった。」



 私はお母さんに言われた通り、出来るだけゆっくりと数を数えた。



 「……8…9…10!
もういいかい?」



 「もういいよ。」の声はなかったけど、10数えたから私は目を開けて振り返った。



 「おかあさん、どこ?」



 急に得体の知れない胸騒ぎに襲われた。



 「おかあさん!おかあさん!」



 私は寒い公園でお母さんを捜し続けた。
でも、どこにもおかあさんの姿はなく…
そのうちに暗くなって来て、私はどうしようもなく心細くて、泣きながら家に戻った。



なぜお母さんが家を出たのか、それはいまだにわからない。
お父さんは元々寡黙な人で、いまだに何も話してくれないから。



 手がかりひとつ残さずに、お母さんはいなくなってしまった。
もしかしたら、北風に連れ去られてしまったんじゃないか…
そんな馬鹿馬鹿しいことを考えたりもする。



もしもそうならば…またいつか、北風がおかあさんをこの公園に連れて来てくれるんじゃないか…
そんな夢みたいなことを考えながら、私は寒い公園を後にした。

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