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縁結びの雨
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「あ、あぢぃ……」
まだ5月っていうのになんて暑さだ。
しかも、まだ午前中だっていうのに…
こんなの初夏じゃない。
真夏の暑さだ!
俺はイライラしながら、Tシャツの袖をまくった。
冬生まれのせいか、俺は暑さにはめっぽう弱い。
夏なんかなくなれば良いと思ってるくらいだ。
こんなことなら、今日は家で引きこもっていればよかった。
別に買い物なんて明日でも良かったのだから。
心の中で愚痴ってるうちに、スーパーに着いた。
このあたりでは一番大きくて、品揃いが良く食品も新鮮なスーパーだ。
(はぁ……)
エアコンの効いた店内に入り、ようやく生き返ったような気がした。
俺は、必要なものを次々とカートに入れる。
買い物が済み、外に出ようとしたら、外は雨が降っていた。
(さっきまであんなに晴れてたのに、なんだよ、今日の天気は!最悪……ん?)
ふと見ると、スーパーの入り口付近には、空を見上げて困ったような顔をする人達が数人いて…
その中に、一人…とても目を引く女性がいた。
彼女はどこかに電話をかけていた。
(可愛い…!無茶苦茶、タイプなんですけど~!)
だけど、ナンパなんて滅多にしたことないし…
でもでも、こんなチャンスを逃したら、こんな素敵な出会いはないかもしれないし。
迷ってる俺のところに、なんと、彼女が近付いて来て…
「あの…すみません。
厚かましいんですけど、ちょっとスマホを貸していただけないでしょうか?
私のスマホ…充電が切れちゃって…」
「ど、どうぞどうぞ。」
俺はポケットからスマホを取り出し、手渡した。
彼女はその場からちょっと離れ、どこかに電話をかけていた。
「……そうですか。わかりました。」
彼女は、ちょっと落ち込んだ顔で戻って来た。
「ありがとうございました。」
そう言ってスマホを返し、彼女は財布を取り出した。
「あの、少ないですが、電話代…」
「そんなの良いですよ。
それより、何か問題ですか?」
「いえ…なんでも…」
「そうですか、あ、傘はお持ちですか?」
「いえ…持ってません。」
「じゃあ、雨が止むまで、中のフードコートでコーヒーでも飲みませんか?」
「えっ!?」
彼女はびっくりしたようだったけど、意外にもその誘いに応じてくれた。
「えっ!それだったら、俺が見ますよ。」
「ほ、本当ですか?」
彼女は、昨日、この近くに引っ越して来たらしく、風呂の沸かし方が今までとは違ってわからないので、大家に電話をかけていたらしい。
だけど、大家は今は近くにいないとのことで、今日は行けないと言われて困っていたということだった。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか。」
コーヒーを飲みながらしゃべっている間に、雨はあがっていた。
再び顔を出し始めた太陽にも、今度は不思議と腹が立たなかった。
まだ5月っていうのになんて暑さだ。
しかも、まだ午前中だっていうのに…
こんなの初夏じゃない。
真夏の暑さだ!
俺はイライラしながら、Tシャツの袖をまくった。
冬生まれのせいか、俺は暑さにはめっぽう弱い。
夏なんかなくなれば良いと思ってるくらいだ。
こんなことなら、今日は家で引きこもっていればよかった。
別に買い物なんて明日でも良かったのだから。
心の中で愚痴ってるうちに、スーパーに着いた。
このあたりでは一番大きくて、品揃いが良く食品も新鮮なスーパーだ。
(はぁ……)
エアコンの効いた店内に入り、ようやく生き返ったような気がした。
俺は、必要なものを次々とカートに入れる。
買い物が済み、外に出ようとしたら、外は雨が降っていた。
(さっきまであんなに晴れてたのに、なんだよ、今日の天気は!最悪……ん?)
ふと見ると、スーパーの入り口付近には、空を見上げて困ったような顔をする人達が数人いて…
その中に、一人…とても目を引く女性がいた。
彼女はどこかに電話をかけていた。
(可愛い…!無茶苦茶、タイプなんですけど~!)
だけど、ナンパなんて滅多にしたことないし…
でもでも、こんなチャンスを逃したら、こんな素敵な出会いはないかもしれないし。
迷ってる俺のところに、なんと、彼女が近付いて来て…
「あの…すみません。
厚かましいんですけど、ちょっとスマホを貸していただけないでしょうか?
私のスマホ…充電が切れちゃって…」
「ど、どうぞどうぞ。」
俺はポケットからスマホを取り出し、手渡した。
彼女はその場からちょっと離れ、どこかに電話をかけていた。
「……そうですか。わかりました。」
彼女は、ちょっと落ち込んだ顔で戻って来た。
「ありがとうございました。」
そう言ってスマホを返し、彼女は財布を取り出した。
「あの、少ないですが、電話代…」
「そんなの良いですよ。
それより、何か問題ですか?」
「いえ…なんでも…」
「そうですか、あ、傘はお持ちですか?」
「いえ…持ってません。」
「じゃあ、雨が止むまで、中のフードコートでコーヒーでも飲みませんか?」
「えっ!?」
彼女はびっくりしたようだったけど、意外にもその誘いに応じてくれた。
「えっ!それだったら、俺が見ますよ。」
「ほ、本当ですか?」
彼女は、昨日、この近くに引っ越して来たらしく、風呂の沸かし方が今までとは違ってわからないので、大家に電話をかけていたらしい。
だけど、大家は今は近くにいないとのことで、今日は行けないと言われて困っていたということだった。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか。」
コーヒーを飲みながらしゃべっている間に、雨はあがっていた。
再び顔を出し始めた太陽にも、今度は不思議と腹が立たなかった。
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