1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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むかしーらんど

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「あっ!見て!
あそこになんかあるよ。」

 「えっ!あ、本当だ。」



その日、僕と順子は旅行に来ていた。
ネットでみつけた格安の旅行だ。
 安い割には、旅館も綺麗だったし、食事も美味しかった。
 昨日は海に行き、子供時代に戻って、二人で思いっきり泳いだ。
 今日は帰る前にちょっと時間があったので、近くを散策していた。
そんな時、僕らはそこをみつけたんだ。



 近付いてみると、木の看板にかすれた文字で何やら書いてあった。



 「何なに?む、かしーうんど?」

 「違うよ、きっと、むかしーらんどだよ。」

 「何?むかしーらんどって?」

 「さぁ…??」



 「ようこそ、むかしーらんどに!」



 「わっ!」

 振り向くと…



「うわっ!」

そこには、サングラスをかけ、ビキニを着たつるっぱげの爺さんがいた。



これはやばい!
 逃げようとしたら、爺さんが僕の腕をがしっと掴んだ。



 「さぁさ、こちらへ。
むかしーらんど特製のゼットコースターへどうぞ。」

 「す、すごいですね。ジェットコースターなんてあるんですね。」

 「あるよ、あるよ。わしの手作りじゃよ!ここのあとらくしょんは、全部わしが作ったんじゃ。」



えーっ!
 手作りー!?
 大丈夫なのか~!



 着いたら、そこにはみかん箱みたいな粗末な乗り物があった。



 「さぁ、乗んなさい。」

 「は、はい。」



 嫌と言えないのが、僕達の悪いところだ。
 僕らは、みかん箱に並んで座った。



 「ミュージックスタート!」

 爺さんは古めかしい蓄音機を動かした。
 間延びした音楽が流れ、箱が坂をゆっくりと登りだした。



まさか、ぶつかって大破することなんてないよな?
 不安でドキドキは最高潮だ。
ある意味、無茶苦茶、怖い!



 坂はそう高くはなかったけど、妙に怖い。



 「うわぁ~!」

 僕と彼女は抱き合い、大声を上げた。



 「……ん?」

 「はいっ、お疲れさん!」

ゆるゆると箱が落ちた。
 滑り台程度のものだった。



 (どこが、ジェットコースターだ!)

 心の中では愚痴を言いながらも、実際には何も言えない。
 僕らは次々にへんてこなしょーもない遊具に乗せられ…
帰り際には、ひとり5000円という料金を取られた。



 「酷い目にあったね。」

 「うん、でも、まぁ、これも夏の思い出だよ。
カズ君と一緒だと、どんなことも楽しいよ。」

 「順子……」



あぁ、僕はなんて素敵な彼女を持ったんだろう?
 本当に幸せだ!
むかしーらんどのおかげで、僕はそのことを再認識した。

 
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