1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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恵みの雨

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「ちょっと…もういいかげんにしてよね!」



 流れ出る汗をぬぐいながら、温くなったスポーツドリンクを喉を鳴らして流し込む。
 怒ったところで、どうなるわけではない。
そんなことはわかっているけど、もう9月だっていうのにこの暑さは何なんだ!?
 私が思わず愚痴ってしまうのも仕方ないことだと思うのだけど…



サウナみたいにむしむしする空気よりも、さらに頭に来るのが雅也だ。
そもそも、こんなくそ暑い日に、こんな作業をしているのは雅也のせいなんだから。



 (雅也の馬鹿野郎!)



 怒りを込めて、私は鍬を振り下ろす。
 新居の庭に、畑と花壇を作ろうと言い出したのは雅也だ。
それは私も良いとは思う。
 遊びに来た両親に、その畑で作った野菜を使った料理を出そうという案にも賛成した。
だけど、雅也は仕事が忙しいとそればかりで、結局、作業をするのはこの私。
いくら専業主婦だからって言ったって、私は元々、力持ちでもなければ、こんな作業だってしたことないのに。



 痛む腰をさすりながら、私は広い庭を耕した。
もう一週間くらい、ずっとこの作業に携わっている。
 乾燥した固い土地をよくぞここまで耕したものだ。
 頑張った甲斐あって、あとはレンガで囲って、種をまくだけとなった。



 (ちょっと休もう…)



ひと段落ついたから、私は休憩することにした。
エアコンの効いた部屋は、まさに天国だ。
 快感に浸りながらソファに寝っ転がっているうちに、私はいつの間にか、夢の世界に旅立っていた。



 (…えっ!?)



 私の目を覚まさせたのは、土砂降りの雨の音だった。
そういえば、秋雨前線がどうこうって天気予報で言ってたっけ。



 外を見ると、畑は豊かに水を含み、土はやわらかくなってるみたいだ。
これなら種まきもしやすいだろうし、雨が降ったから、今日の作業はこれでもうおしまいにできる。
いつもはただ鬱陶しいとしか思わない雨が、今日はなんだかありがたいもののように感じた。
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