1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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宇宙へ

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(やった…俺はついにやったぞ!)



 大きなスクリーンに映し出される青く美しい星…
今頃、研究所は大変なことになっているだろう。



うちの研究所では、月への無人宇宙船を開発していた。
だが、俺はその宇宙船にこっそりと有人用へと改造を加えた。
 行き先も月ではない。金星だ。



 俺は、無断で宇宙船を発進させた。
もちろん、到底許されることではないが、俺はどうしても自分の気持ちを押さえられなかったのだ。



 (カテリーナ!待ってろよ!もうすぐ会えるから!)



それは、11年前のことだった。
 俺達は金星からの無線を受信した。
その言葉は誰にも理解出来ない未知の言語だったが、ある時、俺は唐突にその言葉を理解出来るようになったのだ。
いや、それは理解というものではなかった。
テレパシーのようなものだ。
 相手は、金星人の技術者、カテリーナ。
 彼らは、地球人との交流を望んでいるようだった。
 俺は、カテリーナから金星のことを聞き、俺は、地球のことを伝えた。
もちろん、そのことは誰にも話さなかった。
 話したところで、頭がおかしいと言われるのがオチだろう。
カテリーナとの交信を続けているうち、俺はいつしかカテリーナを愛するようになっていた。
その気持ちはどんどん大きくなり、やがて押さえきれない程、強いものとなっていた。



 「カテリーナ、俺…君に会ってみたい!」

 「私だって会いたいわ。
でも、地球に行けるのはごく限られた優秀な人のみ。
 私みたいなただの研究員が行くことは不可能なの。」

 「だったら、俺がそっちに行く!」



カテリーナから宇宙船の開発に役立つ情報をたくさん聞いた。
そのおかげで、宇宙船が完成したとも言える。



そして、ついにその宇宙船を無断で発進させたのだ。



もしかしたら、俺はどうかしているのかもしれない。
カテリーナとのことがただの妄想だったら…
俺が精神を病んでいるのなら…
いや、そうでなくとも、無事に金星に着き、そしてカテリーナに会える可能性はかなり低いと思える。
それ以前に、俺はきっともう地球に戻れることはないだろう。
そうわかっていても、俺は自分の気持ちが押さえきれなくて…死すらも歯止めにはならなかった。



 (カテリーナ……)



しばらく眠ろう…旅はまだ始まったばかり…
カテリーナの住む金星に着くことを願いながら…

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