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 「ご馳走様、美味しかったよ。」

 柊司さんは、お椀のおかゆを全部たいらげてくれた。
しかも『美味しかった』だなんて、なんだかすごく嬉しい。



 「食べられて良かったです。
あ、お昼のお薬、飲んで下さいね。」

 「うん、わかった。」

 薬を飲んで、柊司さんはまた横になる。



 「どうやら、このインフルは課長から移ったみたいだよ。」

 「え?」

 「うん、課長がね…先週の頭くらいからかな、えらく咳をしてたんだよ。
さっき、友達に電話したら、課長とあと社員が二人、インフルで休んでるらしいんだ。
えらいことだよ。これ以上、広がらなきゃ良いんだけど…」

 「そうですよね。
インフルは移りますから、無理して会社に行かれたら却って良くないですよね。」

 「本当にそうだね。
インフルになっちゃった人にはしっかり休むように、具合の悪い人はすぐに病院に行くように伝えてもらったよ。
 僕は毎年、インフルの予防接種は受けてるんだけど、今年はまだ行ってなかったんだ。
 油断大敵だね。
あ、君も受けといた方が良いよ。
インフルはとても辛いからね。」

 「……そうですね。」

 私は、曖昧に笑った。
 実を言うと、私、注射は大の苦手なんだ。
だから、予防接種にはいかないよ。

 
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