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 「三田さんには本当に悪いことしちゃったね。」

 「仕方ありませんよ。」



なんと、次の日の朝、三田さんから電話がかかって来た。
 高熱が出たのでお休みするという電話だった。
おそらく、柊司さんの会社の課長さんのインフルが柊司さんに移って、そのインフルが三田さんに移った…と、そういうことだろうね。
そういえば、三田さん…昨日、咳込んでたもんね。



つまり、ここにはインフル菌が蔓延してたってことなんだろうけど…
ピンピンしてる私って、一体…?
それとも、私もそのうち倒れるのかな?



 「インフルだったら、数日は休みだね。
すぐに代わりの家政婦さんを…」

 「いえ、数日だったら必要ありません。
 三田さんほど完璧には出来ないと思いますが、私が家事はしますから…」

なぜだろう?
 家事を出来ることがなんだか嬉しい。
 柄にもないけど、こういうのが『女心』ってやつなのかな?
 柊司さんのために何かしてあげたい気持ち…
それから、ほめてほしい気持ちもちょっとあるかな?
とにかく、私にとってはとてもありがたいことだった。



 「すぐにおかゆを作って来ますからね。」

 「うん、ありがとう。」

こんな簡単なことで感謝されるなんて、申し訳ないくらいだよ。
 昨日と同じ手順で、私はおかゆを作った。

 
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