幸せの花が咲く町で

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
41 / 308
side 香織

しおりを挟む
三十を少し過ぎた頃だったか……
ふと、自分の人生を虚しく感じた。
それは職場で同年代の人達が、結婚したり、彼氏の話をよく聞くようになったせいかもしれない。



 私は、おしゃれもせず、おいしいものも食べず、楽しい趣味を持つこともなく、ただただ働くだけで……
それも、生きがいのためなんかじゃなく、ただ、お金のためだ。
 莫大なお金ではなく、最低限の生活しか出来ないお金のために、私は働き続けて来た……
あらためて考えると、その虚しさに吐き気がするほどだった。



 私はこのままただお金のために働いて……
人生の楽しみを何も知らずに死んでいくのかと思ったら、たまらないほどの焦りを感じた。



その時、小耳にはさんだ同僚の話が頭に浮かんだ。
メル友サイトで知り合った人と付き合ってるという話だ。
 私は早速、検索してサイトをみつけ、登録した。



 『年齢、性別、問いません。
どなたかよろしくお願いします。』

 趣味は読書ということにした。
なしと書くのもあまりに味気ないと思い、最近は全く読んでなかったけれど、子供の頃は本を読むのが好きだったから。
ハンネはなかなか思いつかなかったので、ひらがなで「かおり」にした。



 少し経つと、続々とメールが届いた。
 数分おきに鳴り響くメールの着信音……
びっくりすると同時に、なんだか胸が弾んだ。
まるで、自分が人気者にでもなったかのような錯覚に、私は長い間忘れてたわくわくする気持ちを感じてた。


 「いたた……」


 来るメール、全部に返信していたら、親指が痛くなった。
 嫌われないように、返信にも気を配り、夜通しメールを打ち続けた。


 何度かやり取りをすると、「どんなタイプ?」「誰に似てる?」「身長と体重教えて!」
 必ずといっていい程、容姿についての質問をされた。

 自分の容姿には自信がなかった。
いつも同じような地味臭い服を着て、美容院には行ったことがなく、化粧もほとんどしない。
 特別醜いとは思っていなかったものの、自分に魅力がないことはわかっていた。
そうでなければ、今までに一度や二度くらい、男性に声をかけられるはず。
 職場ではいつも実年齢より上に見られたし、私の容姿に誇れるものは何ひとつなかった。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】 積み上がった伏線の回収目前!! 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

処理中です...