83 / 697
014. 高級マツタケ
3
しおりを挟む「とかやん、これ!
おじいさんが言うとったんはこれとちゃうか?」
ロッシーと同じように腰をかがめ、僕はそのきのこを見た。
確かにおじいさんの言ってた通りだ。
「きっとこれだよ!」
「……でも、なんか変なにおいがせえへんか?」
僕は、きのこに鼻を近づけた。
トカゲ族は、他の獣人達と比べると嗅覚はうんと劣っているのだけど、その香りはかなり強くて…今まで嗅いだ事のないとても良い香りだった。
「すごく良い香りじゃないか!
これだよ!
これに間違いないよ!」
僕がそう言ってもロッシーは納得出来ないようで、何度も首を捻っていた。
もしかしたら鼻の良いロッシーにはこの香りは強過ぎるのかもしれない。
「とかやん、採ってくれるか?」
「良いけど…なんで君が採らないの?」
「根元から少しずつ揺らしながら慎重に採らへんと、途中で折れたりするらしいやんか。
折れたら商品価値が落ちるらしいし。
わてらには肉球があるし、あんまり繊細な作業は得意やないんや。
せやから、とかやん、頼むわ。
君は指が長いし、なんでもけっこう丁寧やから大丈夫やろ。」
失敗したらどうしようって不安はあったけど、そんな風に言ってもらえて、僕はちょっと嬉しかった。
僕はこれと言って得意なこともないし、役に立てることなんてほとんどないから誰かに頼りにされることだってなかったんだから。
手を伸ばし、おじいさんに教わったことを思い出しながら、僕は慎重にきのこを引き抜いた。
「やった!
うまいこと採れたがな!
とかやんに頼んで良かったわ!」
ロッシーは、とても嬉しそうな顔でそう言った。
僕もとても嬉しくて、そして、少し照れ臭かった。
僕が人間だったら、きっと赤くなってただろうと思う。
その後、僕とロッシーは一緒に行動した。
ロッシーがあの大きな目できのこをみつけ、僕がそのきのこを採る。
頂上に近付くごとにきのこの数は増え、気がつくといつの間にかかごの中はきのこでいっぱいになっていた。
おじいさんの言ってた通り、その独特な香りはとても芳しく、食欲をそそる。
これだけたくさん採れたんだから、一本くらいは僕も食べてみたいと思った。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
初めまして婚約者様
まる
恋愛
「まあ!貴方が私の婚約者でしたのね!」
緊迫する場での明るいのんびりとした声。
その言葉を聞いてある一点に非難の視線が集中する。
○○○○○○○○○○
※物語の背景はふんわりしています。スルッと読んでいただければ幸いです。
目を止めて読んで下さった方、お気に入り、しおりの登録ありがとう御座いました!少しでも楽しんで読んでいただけたなら幸いです(^人^)
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる