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014. 高級マツタケ
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しおりを挟む「とかやん、これ!
おじいさんが言うとったんはこれとちゃうか?」
ロッシーと同じように腰をかがめ、僕はそのきのこを見た。
確かにおじいさんの言ってた通りだ。
「きっとこれだよ!」
「……でも、なんか変なにおいがせえへんか?」
僕は、きのこに鼻を近づけた。
トカゲ族は、他の獣人達と比べると嗅覚はうんと劣っているのだけど、その香りはかなり強くて…今まで嗅いだ事のないとても良い香りだった。
「すごく良い香りじゃないか!
これだよ!
これに間違いないよ!」
僕がそう言ってもロッシーは納得出来ないようで、何度も首を捻っていた。
もしかしたら鼻の良いロッシーにはこの香りは強過ぎるのかもしれない。
「とかやん、採ってくれるか?」
「良いけど…なんで君が採らないの?」
「根元から少しずつ揺らしながら慎重に採らへんと、途中で折れたりするらしいやんか。
折れたら商品価値が落ちるらしいし。
わてらには肉球があるし、あんまり繊細な作業は得意やないんや。
せやから、とかやん、頼むわ。
君は指が長いし、なんでもけっこう丁寧やから大丈夫やろ。」
失敗したらどうしようって不安はあったけど、そんな風に言ってもらえて、僕はちょっと嬉しかった。
僕はこれと言って得意なこともないし、役に立てることなんてほとんどないから誰かに頼りにされることだってなかったんだから。
手を伸ばし、おじいさんに教わったことを思い出しながら、僕は慎重にきのこを引き抜いた。
「やった!
うまいこと採れたがな!
とかやんに頼んで良かったわ!」
ロッシーは、とても嬉しそうな顔でそう言った。
僕もとても嬉しくて、そして、少し照れ臭かった。
僕が人間だったら、きっと赤くなってただろうと思う。
その後、僕とロッシーは一緒に行動した。
ロッシーがあの大きな目できのこをみつけ、僕がそのきのこを採る。
頂上に近付くごとにきのこの数は増え、気がつくといつの間にかかごの中はきのこでいっぱいになっていた。
おじいさんの言ってた通り、その独特な香りはとても芳しく、食欲をそそる。
これだけたくさん採れたんだから、一本くらいは僕も食べてみたいと思った。
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