Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

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040. 月の慰め

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「母さん、起きて!
母さん!信じられない事が起こったの!母さん!!」

けたたましく声をかけられエリーズは目を覚ました。
意識が戻った途端、エリーズは身体のあちこちが痛むのを感じ、思わず眉をひそめた。
どこが痛いのかさえよくわからない…急に胃のあたりを掴まれるような痛みが走ったかと思うと、背中が刺すように痛む。
今までに感じたことのない不快な症状をこらえ、エレーヌはファビエンヌの顔を見上げた。




「母さん…?どうかしたの?」

「ファビエンヌ…ごめんなさい。
私、どうしたのか今日はえらく具合が悪くて…」

そう言って身体を起こそうとした時、世界が回りエレーヌはなんともいえない気分の悪さにまたすぐに身を横たえた。
激しい動悸がしてエレーヌの顔からは汗が吹き出す。



「母さん、大丈夫?
一体、どうしたのかしら…
まるで私と母さんの身体が入れ替わったみたいだわ…」

その言葉に、エレーヌの脳裏をあの記憶が駆け巡った。



(そうだ…!
昨夜、ファビエンヌが寝ついた後、私は月の祠に行って…
ま…まさか…では、昨夜のあのことは…!)

昨夜、どうやって帰って来たのかもエレーヌは覚えてはいない。
女神と会話をしたのも夢の中の出来事のようにも感じられる。
だが、月の祠に行ったことだけは夢ではないはずだとエレーヌは考えた。
なぜなら、あの場所へは毎日欠かさずに行っているのだから。




「母さん…?」

ファビエンヌの声で、そんな物思いからエレーヌは現実に引き戻された。



「ファビエンヌ…あなた…!」

普段は、エリーズの助けを借りないと歩く事も出来ないファビエンヌが、一人でこの部屋に来ていることに気が付いたのだ。



「あなた、ここまで一人で来たの?!」

「ええ…!
今朝、目が覚めたら、私いつもと身体の調子がまるで違うことに気が付いたの…
いつもなら身体の痛みと気分の悪さが襲って来るのに、今日はどこも痛くないのよ!
それに、とてもおなかがすいてるの!
まるで、私の身体じゃないみたい!」

「……良かったわ…ファビエンヌ…
あなたはもう心配ないわ。
病気はもう治ったのよ…」

「まさか、そんな…
でも、本当にそうだったらどれほど幸せなことかしら…」

「本当に良かったわ…」

エリーズはファビエンヌの手を取り、涙を流した。

ファビエンヌはその後、日を追う毎に健康を取り戻し、それとは逆にエレーヌはどんどん衰弱していった。
やがて数ヶ月程が経った後、エレーヌはひっそりと旅立った…
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