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064. 水に没む
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「私、こんな染みの付いた服じゃ外に出られないわ!」
女はヒステリックな声をあげてその場に座りこみ、涙を流し始めた。
金持ちのわがまま娘が言い出しそうなことだ。
ウェイドは何度も頭を下げ、おかみは自分のドレスを持って来たが、そんな安物は着られないと泣くばかりだった。
俺は、その時、ひらめいたことがあり、女性の傍に歩み寄り声をかけた。
「お嬢さん、そんなに泣いたんじゃ、あなたの美しい顔が台無しですよ。
さぁ、涙を拭いて。」
そう言って、俺はハンカチを差し出し、女を立たせた。
そして、昨夜、行商の親子にもらったスカーフを女の腰に巻きつけた。
「ほら、こうすれば、染みは全然見えませんよ。」
「あ……」
女性は、腰のスカーフを見つめたまま、言葉を失った。
やがて、ゆっくりとスカーフに手を伸ばした。
その行為は、生地の感触を確かめているように見えた。
「……これはいただいて良いのですか?」
「ええ…これは旅先でみつけて妹への贈り物にと買い求めたものですが、あなたのような美しい方に使っていただけたら、そのスカーフは妹に使われるよりずっと喜ぶはずですから。」
その言葉に女はにっこりと微笑んだ。
使用人が気を遣い、代金を払うと言ったが、これは友人のミスだから…と、俺はその金を受け取らなかった。
「すまなかったな、ラスティ、俺のせいで…
あれ、高かったんだろ?」
「……いや…気にしないでくれ。」
俺はそう言ったが、ウェイドは気にして昨夜の俺の飲み代を払ってくれた。
さらに、ウェイドは俺を自分の家まで案内し、俺に両手を合わせた位の包みを手渡した。
「ウェイド、何なんだ、これ?」
「妹さんへの土産にしてくれよ。
俺が作ったオルゴールだ。」
「オルゴール…?」
そう言われれば、昨夜、そんな話をしていたような気がして来た。
俺にはあまり興味のないことだけに聞き流していたんだが、彼はとても熱く話をしていたことを俺はぼんやりと思い出した。
さっきのスカーフが妹への贈り物だなんて嘘だ。
俺には妹なんていないし、あれは行商の親子からもらったものなのだとわざわざ説明する気にはなれず、俺は彼に礼を述べ、オルゴールを素直に受け取った。
女はヒステリックな声をあげてその場に座りこみ、涙を流し始めた。
金持ちのわがまま娘が言い出しそうなことだ。
ウェイドは何度も頭を下げ、おかみは自分のドレスを持って来たが、そんな安物は着られないと泣くばかりだった。
俺は、その時、ひらめいたことがあり、女性の傍に歩み寄り声をかけた。
「お嬢さん、そんなに泣いたんじゃ、あなたの美しい顔が台無しですよ。
さぁ、涙を拭いて。」
そう言って、俺はハンカチを差し出し、女を立たせた。
そして、昨夜、行商の親子にもらったスカーフを女の腰に巻きつけた。
「ほら、こうすれば、染みは全然見えませんよ。」
「あ……」
女性は、腰のスカーフを見つめたまま、言葉を失った。
やがて、ゆっくりとスカーフに手を伸ばした。
その行為は、生地の感触を確かめているように見えた。
「……これはいただいて良いのですか?」
「ええ…これは旅先でみつけて妹への贈り物にと買い求めたものですが、あなたのような美しい方に使っていただけたら、そのスカーフは妹に使われるよりずっと喜ぶはずですから。」
その言葉に女はにっこりと微笑んだ。
使用人が気を遣い、代金を払うと言ったが、これは友人のミスだから…と、俺はその金を受け取らなかった。
「すまなかったな、ラスティ、俺のせいで…
あれ、高かったんだろ?」
「……いや…気にしないでくれ。」
俺はそう言ったが、ウェイドは気にして昨夜の俺の飲み代を払ってくれた。
さらに、ウェイドは俺を自分の家まで案内し、俺に両手を合わせた位の包みを手渡した。
「ウェイド、何なんだ、これ?」
「妹さんへの土産にしてくれよ。
俺が作ったオルゴールだ。」
「オルゴール…?」
そう言われれば、昨夜、そんな話をしていたような気がして来た。
俺にはあまり興味のないことだけに聞き流していたんだが、彼はとても熱く話をしていたことを俺はぼんやりと思い出した。
さっきのスカーフが妹への贈り物だなんて嘘だ。
俺には妹なんていないし、あれは行商の親子からもらったものなのだとわざわざ説明する気にはなれず、俺は彼に礼を述べ、オルゴールを素直に受け取った。
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