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064. 水に没む
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その後、町を出た俺はあてもなく街道沿いを歩いていた。
しばらく歩くと、俺は分かれ道に出くわした。
一方はそのまま街道に沿って行く道、そしてもう一方は森へと続く道だった。
俺は、森への道を選んだ。
その方が人に会う確率も少ないように思えたからだ。
森の中はどこか空気が澄んでいるようで、少しだけ爽快な気分になれた。
微かに聞こえた水の音から俺は小さな泉をみつけ、そこで冷たい水を飲むと、気持ちはますます良くなった。
木の根元にもたれ、俺はウェイドにもたされた包みを開いた。
中から出て来たのは、木の質感そのものの素朴なオルゴール。
しかし、それにはとても繊細な模様の彫刻が施されていた。
その腕前に感心しながら、俺はオルゴールの蓋をそっと押し開けた。
聞こえて来たのは…題名はわからないが、確か有名なクラシックの曲だったと思う。
なんとも言えない優しい音色に、俺は目を閉じ、うっとりと聞きほれた。
閉じた目の中に浮かんで来るのはやはりメアリのことで…俺はいつの間にか頬を涙で濡らしていた。
「素晴らしい音色ね…」
背中から不意に聞こえて来た声に、俺は気付かれないように袖で涙を拭い振り向いた。
そこに立っていたのは上品な初老の女性だった。
「もう少し効かせてもらって良いかしら?」
俺が答える前に女性は言葉を続けた。
「ええ、どうぞ…」
お座りになりますか?と尋ねようとして、俺は彼女が杖を持っていることに気が付いた。
おそらく足が悪いのだろう。
立たせたままなのは気になったが、もしそうなら座る方が苦になるだろうと考え、俺はそれ以上何も言わなかった。
やがて、オルゴールのねじが切れ、森の中の演奏会は幕を閉じた。
「ありがとう。
心が癒されたわ。
あの…宜しければ、お茶でもいかが?
うちはすぐ傍なの…」
思いがけない誘いに、俺は一瞬戸惑ったが、足の悪い彼女を一人で帰すのが心配になり、俺はその誘いを受けることにした。
「ええ、喜んで…」
しばらく歩くと、俺は分かれ道に出くわした。
一方はそのまま街道に沿って行く道、そしてもう一方は森へと続く道だった。
俺は、森への道を選んだ。
その方が人に会う確率も少ないように思えたからだ。
森の中はどこか空気が澄んでいるようで、少しだけ爽快な気分になれた。
微かに聞こえた水の音から俺は小さな泉をみつけ、そこで冷たい水を飲むと、気持ちはますます良くなった。
木の根元にもたれ、俺はウェイドにもたされた包みを開いた。
中から出て来たのは、木の質感そのものの素朴なオルゴール。
しかし、それにはとても繊細な模様の彫刻が施されていた。
その腕前に感心しながら、俺はオルゴールの蓋をそっと押し開けた。
聞こえて来たのは…題名はわからないが、確か有名なクラシックの曲だったと思う。
なんとも言えない優しい音色に、俺は目を閉じ、うっとりと聞きほれた。
閉じた目の中に浮かんで来るのはやはりメアリのことで…俺はいつの間にか頬を涙で濡らしていた。
「素晴らしい音色ね…」
背中から不意に聞こえて来た声に、俺は気付かれないように袖で涙を拭い振り向いた。
そこに立っていたのは上品な初老の女性だった。
「もう少し効かせてもらって良いかしら?」
俺が答える前に女性は言葉を続けた。
「ええ、どうぞ…」
お座りになりますか?と尋ねようとして、俺は彼女が杖を持っていることに気が付いた。
おそらく足が悪いのだろう。
立たせたままなのは気になったが、もしそうなら座る方が苦になるだろうと考え、俺はそれ以上何も言わなかった。
やがて、オルゴールのねじが切れ、森の中の演奏会は幕を閉じた。
「ありがとう。
心が癒されたわ。
あの…宜しければ、お茶でもいかが?
うちはすぐ傍なの…」
思いがけない誘いに、俺は一瞬戸惑ったが、足の悪い彼女を一人で帰すのが心配になり、俺はその誘いを受けることにした。
「ええ、喜んで…」
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