584 / 697
083. 幻想の草原
4
しおりを挟む
*
村に入ると、俺達とすれ違うエルフ達が俺達を見て驚いたような顔をする。
きっと、ここに人間が来ることは稀なんだろうな。
でも、その顔は悪意を感じるものではなく、驚いたような顔の後には、皆、にっこりと微笑んでくれるんだ。
どのエルフも、ジーニアスと同じように背が高くて綺麗だ。
面白い顔をした者は一人もいない。
ま、それも考えてみれば当然だな。
エルフはエルフとしか結婚しないだろうから、綺麗な者同士からは綺麗な子が生まれるわけだ。
そういえば、顔つきも、皆、どことなく似ている。
家も人間の家とほとんど変わらない。
特に馬鹿でかくもなく、みすぼらしいこともない、ごく標準的な煉瓦作りの家だ。
「あそこが長の屋敷です。」
長の屋敷は、そこに来るまでに見た他の家よりはやはり大きく立派な感じがした。
ジーニアスが扉を叩くと、エルフの男と女が出迎えた。
多分、屋敷の使用人のような者なんじゃないかな?
二人は俺達を見てやっぱり驚いていたが、ジーニアスはそんなことには構わず俺達を部屋の奥に案内した。
その態度から察するに、ジーニアスはけっこう身分の高いエルフなのかもしれない。
「あれが長です。」
奥の広い部屋の寝台で、長は眠っていた。
やっぱりその長もとても上品で美しい顔で…
俺は、しばらく見とれてしまう程だった。
「ルークさん、笛を出していただけますか?」
「あ…あぁ、そうだったな。」
俺はランスロットに頷き、懐からおずおずと笛を差し出した。
「ありがとうございます。」
ジーニアスは受け取った笛を嬉しそうに眺めると、優雅な動作で笛を構え、唇をあてた。
笛からは心地良い音色が流れ出す。
ジーニアスが笛を構える姿は憎い程絵になっている。
その音色と姿に俺がうっとりとしていると、使用人の二人が声を上げた。
長が目を覚ましたんだ。
「シューメイヤ様!」
ジーニアスもすぐにそのことに気付き、笛の音もそれと同時にぴたりと止んだ。
「ジーニアス……私はどうしたのだ?
この者達は…!?」
「シューメイヤ様、あなたは小人の村の宴の時に眠りの呪いをかけられてしまったのです。
私がついていながら本当に申し訳ございませんでした。
この者達のおかげでようやく目覚めの笛を手に入れることが出来、こうして呪いを解くことが出来たのです。
時間がかかってしまい申し訳ありません。」
ジーニアスは、長に手を貸し、長はゆっくりと半身を起こした。
使用人達は涙を流して長の目覚めを喜び、男の方が部屋から飛び出した。
きっと、村のエルフ達に知らせに行ったんだと思う。
村に入ると、俺達とすれ違うエルフ達が俺達を見て驚いたような顔をする。
きっと、ここに人間が来ることは稀なんだろうな。
でも、その顔は悪意を感じるものではなく、驚いたような顔の後には、皆、にっこりと微笑んでくれるんだ。
どのエルフも、ジーニアスと同じように背が高くて綺麗だ。
面白い顔をした者は一人もいない。
ま、それも考えてみれば当然だな。
エルフはエルフとしか結婚しないだろうから、綺麗な者同士からは綺麗な子が生まれるわけだ。
そういえば、顔つきも、皆、どことなく似ている。
家も人間の家とほとんど変わらない。
特に馬鹿でかくもなく、みすぼらしいこともない、ごく標準的な煉瓦作りの家だ。
「あそこが長の屋敷です。」
長の屋敷は、そこに来るまでに見た他の家よりはやはり大きく立派な感じがした。
ジーニアスが扉を叩くと、エルフの男と女が出迎えた。
多分、屋敷の使用人のような者なんじゃないかな?
二人は俺達を見てやっぱり驚いていたが、ジーニアスはそんなことには構わず俺達を部屋の奥に案内した。
その態度から察するに、ジーニアスはけっこう身分の高いエルフなのかもしれない。
「あれが長です。」
奥の広い部屋の寝台で、長は眠っていた。
やっぱりその長もとても上品で美しい顔で…
俺は、しばらく見とれてしまう程だった。
「ルークさん、笛を出していただけますか?」
「あ…あぁ、そうだったな。」
俺はランスロットに頷き、懐からおずおずと笛を差し出した。
「ありがとうございます。」
ジーニアスは受け取った笛を嬉しそうに眺めると、優雅な動作で笛を構え、唇をあてた。
笛からは心地良い音色が流れ出す。
ジーニアスが笛を構える姿は憎い程絵になっている。
その音色と姿に俺がうっとりとしていると、使用人の二人が声を上げた。
長が目を覚ましたんだ。
「シューメイヤ様!」
ジーニアスもすぐにそのことに気付き、笛の音もそれと同時にぴたりと止んだ。
「ジーニアス……私はどうしたのだ?
この者達は…!?」
「シューメイヤ様、あなたは小人の村の宴の時に眠りの呪いをかけられてしまったのです。
私がついていながら本当に申し訳ございませんでした。
この者達のおかげでようやく目覚めの笛を手に入れることが出来、こうして呪いを解くことが出来たのです。
時間がかかってしまい申し訳ありません。」
ジーニアスは、長に手を貸し、長はゆっくりと半身を起こした。
使用人達は涙を流して長の目覚めを喜び、男の方が部屋から飛び出した。
きっと、村のエルフ達に知らせに行ったんだと思う。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる