Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

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096. 極光(オーロラ)

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「ところが…信じられない事が起こったの…
私達は、夜になってからこの丘に来て、そして夜中近くまでここでいろんなことを話し合った。
そして、私はどうしてもあなたについていくことは出来ない…身を切られる想いで彼にそう言った時…
現れたの…オーロラが…」

彼女の話を聞いて、私の背中に寒いものが走った…
そんなことがあるものなのか…
何十年も現れなかったものがそんなタイミングで現れるとは…

私にはそれが本当に「運命」なのではないかと思えた…

「それで、あなたはご結婚されたのですね?」

彼女は首を横に振った。

「なぜなのです?」

「……私は、感動して知らないうちに泣いてたわ…
そして、母のことも忘れて『あなたについていきます…!』…彼にそう言ってたわ…
彼もとても喜んでくれて、母のことは心配しないで良いからと言って抱き締めてくれた。
次の日の夜、彼は正式に話をしにうちに来ることになったの。
私は、幸せの絶頂で浮かれてた…
でも、彼は時間になっても来なくて…しばらくしてうちに来たのは彼とは違う人だったの。
そして、その人から彼が荷馬車にはねられて死んでしまったことを聞かされた…」

「なんと…」

「私はその日のうちに人生で最高の喜びと最悪の不幸を味わったのよ…
そんなにいっぺんに来てくれなくても良いのにね…」

彼女の無理した微笑みに私は胸が締めつけられるような気がした…

「オーロラって、どこかの国の神話に出てくる女神様らしいのよ。
お兄さんが太陽の神で、妹は月の女神なんですって。
とても美しい女神で2頭の馬にひかれた戦車に乗って花を撒き散らして天を駆けてるそうよ。
でも、恋多き女神だから、愛の女神に嫉妬されて不幸な恋にしか出会えなくされたと言われてるらしいわ。
……私も、オーロラの女神と同じね…」

「そんな悲しいこと…
……でも、あなたはそれでもオーロラがお好きなのですね。
だからこそ、こうして今でも…」

「…違うわ…」

「では、なぜ…?」

「……さぁ、なぜかしら……」

彼女はうつむき微笑んだ…
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