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side 瑠威

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「メンバーのことなんだけど、キーボードを入れるっていうのはどうだろう?」

 「あぁ、それは僕たちも考えたことはあるんですが、良いプレイヤーがみつからなくて…」

 「そう…君たちは全員ルックスも良いし、女子にウケるバンドとして、曲調ももう少しキャッチーなものにした方が良いからね。
ハードなものや重いのは減らして、明るくポップなものを増やしていこう。
そのためにもキーボードはぜひ入れたいと思うんだ。」

 「はぁ…」

 今の提案にはあまり賛成できなかったが、いきなり反論するのもどうかと思って黙っていた。
それはオルガも同じだったらしく、奴も気のない返事をした。



 「それと見た目のことなんだけど、今でも格好良いのは格好良いんだけど、ちょっとマニアック過ぎるね。
このままだとごく一部のファンにしかウケないから、ファッションも少し今風におしゃれなものに変えていこう。
たとえば……」

 岡部さんが、海外の音楽雑誌のようなものをぱらぱらとめくって差し出した。
 髪の短いポップ系のバンドの写真だ。



 「こういう路線はどうかなって思ってるんだ。
このバンドはイタリアで今ものすごく人気のあるバンドでね…」


 俺にはとても受け入れられるものではなかった。
 別に他のバンドをどうこういうつもりはないが、俺達は「黒い痛み」という意味を持つバンドだ。
ダークな面を持ったバンドを目指したかったから…
ポップな曲もあるにはあるが、歌詞にもメロディにもどこか暗さや切なさのあるものを好んで使っている。


それをいきなりあんな明るい感じのバンドを目指せなんて言われても、承服出来るはずがない。
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