お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

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015 : 重ねあう声

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「どうだった?なにかあったのか?」

 「いや…ブランドンさんがいないことで、ステファンが少しナーバスになってるみたいなんだ。」

 「やっぱりそうか。
 最近、どうも元気がないから心配はしてたんだけどな。
 一体、ブランドンはどこに行ったんだろうな?
まさか、あんた、事情を知ってて俺に隠してるんじゃないだろうな。」

 「おいおい、よしてくれよ。
 私は、何も聞いちゃいないさ。
ただ……あの時は、孤児院のことでどこかに相談にでも行くのかと思ってたんだが…
今、思い返してみると、もしかしたらそうではないんじゃないかって気もするんだ。」

 「そうじゃないって…じゃあ、どういうことなんだ?!」

 「それはわからん。
だが…二人共妙に思いつめた顔をしてたとは思わないか?
しかも、あんなに急に…」

 「言われてみたらそうだな。
 前の日までは何も言ってなかったのに、突然だったもんな。」

リュックとそんな話をしていると、ステファンの手をひいたクロワが食堂に入って来た。
ステファンは、やはりまだ沈んだ表情をしていた。



 朝食後も、ステファンは他の子供達と遊ぼうとはせず、クロワにぴったりとくっついていた。
それは、その日一日中続き、夕飯が終わっても、彼は部屋に戻るのを拒否してクロワの傍についていた。



 「ステファン、そろそろ寝る時間よ。
 他の子達はもうとっくに眠ったわよ。」

 「僕、眠くないからここにいる…」

 俯いたまま、ステファンはそう呟いた。



 「ステファン、もう少ししたらおじちゃんは必ず帰って来るから、心配するな!」

リュックの言葉にも、ステファンは顔を上げなかった。
しかし、次の瞬間…



「あ…おじちゃんが帰って来た!」

 「ステファン、待て!」

ステファンが突然玄関へ走り出し、私達はその後を追いかけた。



 「ステファン!!」

 「おじちゃん!!」

 庭の向こう側に二つの人影が見えた。
ステファンは、そこに向かってまっしぐらに走って行く。



 「ステファン!遅くなってごめんな…!」

 「おじちゃん…!!」

ブランドンの腕が小さなステファンの身体を優しく包み込んだ。



 「良かったな、ステファン、おじちゃんが帰って来てくれて…」

ステファンは、涙を流しながら黙ってそれに頷いた。



 「長い間、留守にして申し訳ありませんでした。
 詳しい事は中で…」

ステファンは、ブランドンに抱かれたまま目をつぶっていた。
ブランドンの顔を見て安心して急に睡魔に襲われたのだろう。
とても、安らかな寝顔だった… 

 
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