お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

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035 : 空の宝箱

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「ピーター、これ…」

 息を切らせたリュックがピーターに差し出したものは、トーマスの机の上にあったあの宝箱型の小物入れだった。
それを受け取ったピーターは宝箱をみつめ、おもむろに動きを止めた。
 彼の瞳にはみるみるうちに涙が溜まり、やがてその涙は頬を伝ってこぼれて落ちた。



 「お、おい、ピーター、一体どうしたってんだ!?」

 突然のピーターの涙に、リュックだけではなくその場にいた者全員が驚いていた。



 「それが……俺にも全くわからないんだ…
なんで…なんで、こんなに涙が出て来るのか…
わけがわからない……でも……」

ピーターの涙はなかなか止まらなかった。
 彼を見守る皆にも、何が起こっているのかよくわからないようだった。



 「リュック、その箱は何なの?
どうして、それをピーターに?」

 「……爺さんはどうやらこれを探しに行きたかったみたいなんだ。
 見つかったのは良かったが、爺さんが倒れてた机の上に便箋と共にこれがあった。
 爺さんは、多分、ここに何かを入れて誰かに渡したかったんじゃないかと思うんだ。
 何を入れようと考えていたのかは今となってはもうわからないが、渡したかった相手はやっぱりピーターじゃないのかって思って、それで、俺、もって来たんだ。」

 私は、この時、思った。
この宝箱は空のように見えてはいるが、ちゃんと中身が入っていたのだと。
それは、トーマスのピーターへの想いだ。
 肉親のいなかったトーマスの、ピーターに対する温かい想いだ。



……そして、ピーターはちゃんとそれを受け取った。

 私にははっきりとそう感じられた。
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