249 / 506
045 : 盗み聞きの値段
4
しおりを挟む
「クロワさん…つまり、あの薬草は麻薬のようなものだということですか?」
クロワは、ソレイユの名を出したことで気まずい想いを感じたのか、私とは目をあわさないまま頷いた。
「これは使いようによってはとても危険なものになりますが、普通の薬ではなかなか抑えられないような激しい痛みを和らげることも出来ます。」
「お気の毒なことですが、今の医学では治せない病もたくさんあります。
そしてその中には、とても酷い痛みを伴なわれる方も…」
クロワの返答に添えられたクロードの言葉には重みがあった。
彼は医者だ。
今までに、数多くの患者と接して来ている。
患者がどの程度の痛みや苦しみを感じているかもわかるからこそ、医者という職業を越えて同情したケースもあったかもしれない。
常に冷静で科学的なことしか信じない彼も、血の通った人間だ。
悶え苦しむ患者を前にして、なにも感じないわけではないのだ。
「旅をしていたら、そういう重い病状の患者さんに出会うことはめったにありませんが、なかなか手に入らない薬草ですから、少しだけ採っていきましょう。」
「でも、クロワさん…麻薬にもなるような危険な薬草なら、根こそぎ引っこ抜いておいた方が良いんじゃないのか?
いつも採りに来てる薬師っていうのも、どういうことに使ってるのかわからないぜ。」
「リュック、さっきも言った通り、その薬草には良い効果もあるのよ。
……私は、その薬師さんが悪い事に使ってるとは思えない。
だって、そんなことを考える人なら、それこそ根こそぎ持っていくんじゃないかしら?
麻薬にして売れば、大金が儲かるんですもの。」
「それはそうだが…」
二人のちょっとした言い争いが不意に途切れ、短い沈黙に包まれた時、私達は小さな物音を聞いた。
「誰かいるのか!?」
反射的にリュックが振り向き、声をかけたが、何の反応もなかった。
「私達がつまらない言い争いをしてるから、ソフィーさんが心配して見に来たのかもしれないわね。」
クロワの冗談に、リュックは思わず微笑む。
「……すまなかったな。
薬草のことはクロワさんに任せるよ。」
「私こそ…
……じゃ、この袋に入るだけ採りましょう。」
クロワは頷き、小さ目の麻の袋を差し出した。
クロワは、ソレイユの名を出したことで気まずい想いを感じたのか、私とは目をあわさないまま頷いた。
「これは使いようによってはとても危険なものになりますが、普通の薬ではなかなか抑えられないような激しい痛みを和らげることも出来ます。」
「お気の毒なことですが、今の医学では治せない病もたくさんあります。
そしてその中には、とても酷い痛みを伴なわれる方も…」
クロワの返答に添えられたクロードの言葉には重みがあった。
彼は医者だ。
今までに、数多くの患者と接して来ている。
患者がどの程度の痛みや苦しみを感じているかもわかるからこそ、医者という職業を越えて同情したケースもあったかもしれない。
常に冷静で科学的なことしか信じない彼も、血の通った人間だ。
悶え苦しむ患者を前にして、なにも感じないわけではないのだ。
「旅をしていたら、そういう重い病状の患者さんに出会うことはめったにありませんが、なかなか手に入らない薬草ですから、少しだけ採っていきましょう。」
「でも、クロワさん…麻薬にもなるような危険な薬草なら、根こそぎ引っこ抜いておいた方が良いんじゃないのか?
いつも採りに来てる薬師っていうのも、どういうことに使ってるのかわからないぜ。」
「リュック、さっきも言った通り、その薬草には良い効果もあるのよ。
……私は、その薬師さんが悪い事に使ってるとは思えない。
だって、そんなことを考える人なら、それこそ根こそぎ持っていくんじゃないかしら?
麻薬にして売れば、大金が儲かるんですもの。」
「それはそうだが…」
二人のちょっとした言い争いが不意に途切れ、短い沈黙に包まれた時、私達は小さな物音を聞いた。
「誰かいるのか!?」
反射的にリュックが振り向き、声をかけたが、何の反応もなかった。
「私達がつまらない言い争いをしてるから、ソフィーさんが心配して見に来たのかもしれないわね。」
クロワの冗談に、リュックは思わず微笑む。
「……すまなかったな。
薬草のことはクロワさんに任せるよ。」
「私こそ…
……じゃ、この袋に入るだけ採りましょう。」
クロワは頷き、小さ目の麻の袋を差し出した。
0
あなたにおすすめの小説
裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。
夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。
辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。
側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。
※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
魔法使いとして頑張りますわ!
まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。
そこからは家族ごっこの毎日。
私が継ぐはずだった伯爵家。
花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね?
これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。
2025年に改編しました。
いつも通り、ふんわり設定です。
ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m
Copyright©︎2020-まるねこ
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる