お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

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051 : 誘惑

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「なんだって!
それじゃあ、あたしがまるで魅力がないみたいじゃないか!
これでもあたしはけっこうモテるんだよ!
 結婚して欲しいって言われたことだって、何度もあるんだ!
 現にこないだだって……」

 「わ、わかってるって。
あんたに魅力がないとか、モテないなんて思ってるわけじゃないんだ。
い、いや、むしろ魅力的だと思うぜ。
 若いし可愛いと思う。
ただ……俺は、心に決めた人がいるから、だから、どんな女のことも目に入らないっていうか……」

エヴァの剣幕に押されて、言い訳を始めたリュックは、再び、口篭る。



 「あぁ、そうかい、そうかい。わかったよ。
あんたは私には何の興味もないのに、身体だけがほしかったってわけなんだね!」

 「ち、違うって!
 俺は……さっきも言った通り、とにかく酔ってて、何も覚えてなくて……」

 「じゃあ、思い出させてやるよ。
あたしの身体を見ればはっきり思い出すだろ!」

そう言うと、エヴァは目を吊り上げ、着ているものを脱ごうとする。



 「こ、こらっ!や、やめろって!!
 人が見てるだろ!」

 「見たけりゃ見りゃ良いじゃないか。
そんなこと、知ったことか!」

 必死で止めるリュックに、エヴァはなおも激しく抵抗する。



 「やめろって!!」

 今までに見せたことのないような真剣な表情で声を上げたリュックに、エヴァの動きが不意に止まった。



 「俺……なにも、覚えてないから知らないなんて言っちゃいないぞ!
 俺が悪いことは十分わかってる!
あんたがさっき言った通り、男の本性でそんなことやっちまったんだと思う。
これはすべて俺の責任だ。
……本当にすまなかった。」

リュックは神妙な面持ちで、エヴァの瞳を真っ直ぐにみつめてそう言った。



 「……やめておくれよ。
あんたに謝られる筋合いじゃない。
……さっきも言っただろ?
あたしはこう見えてもそんな軽い女じゃないよ。
いやだったら、殴り飛ばしてでも許すもんか。
だから、その……つまり、あんたはディヴィッドにも優しくしてくれるし……」

 「亭主に向いてると思ったってことか?」

 「それももちろんあるけど……
 ……あぁ、全くもう鈍い男だね!
あたしは、あんたのことが気に入ってるんだ、好きなんだよ!
そうじゃなきゃ、家に泊まらせたりなんかするもんか!」

 「す…好き?
 俺のことが…?」

リュックの顔は、みるみるうちに真っ赤に染まっていった。
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