夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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ディーラスを目指して

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 「えっ!ほ、本当なのか?
 本当にこの人が……」

ブライアンの正体を知ったフレイザーとジャックは、食べることも忘れ、じっとブライアンの顔に見入った。



 「彼は夢のお告げで願い石の場所を知った。
だが、今まで彼はそんな風にお告げを感じた事がなかったので、気になって探しに行ったということらしい。
だが、ついついいつもの悪い癖が出て、女性と遊んでいるうちに、私達に先を越されてしまったと……まぁ、そんなところだ。」

 「あ~あ……」

 「ブライアンは元々欲のない男でな。
 願い石で特になにか叶えたい願いがあるというわけでもなく、ただ、お告げが本当かどうかを確かめたかっただけらしい。」

ブライアンの事情を適当に誤魔化したダルシャの話に、ブライアンは苦笑しながら頷いた。



 「そうだったのか…
叶えたい夢がないなんて、世の中には変わった人がいるもんなんだな。
……あれ?じゃあ、ダルシャとはどこで知り合ったんだ?」

 「……それはだなぁ…」

 決まり悪そうな顔で口篭もったダルシャを見て、ジャックがフレイザーにそっと耳打ちし、フレイザーはそれを聞いて小さく頷いた。



 「……なるほど、そういうことか。
そういえば、ダルシャがブライアンのことを聞き込んだのも……」

 「まぁ、そんな事はどうでも良いじゃないか。
とにかく、明日、皆で出発しよう。
きっと、もうセリナ達は願い石をみつけて、私達の来るのを待ち焦がれていることだろう。
……ところで、君達もブライアンに視てもらったらどうだ?
 彼の占いはおそろしい程当たるぞ!」

 「えっ!?」

フレイザーとジャックは顔を見合わせ、そして申し合わせたようなタイミングで首を振る。



 「お…俺は良いよ。
そういうの苦手だし…」

 「俺もいい…」

 「しかし、フレイザー…君は記憶をなくしているのだし、視てもらったら何かわかるかも…」

 「い、いや、良いよ!
こう見えても、俺、けっこう神経質っていうかなんていうか…
いろいろと気にする性質だから、遠慮しとくよ。
あ…料理が冷めちまう。」

フレイザーは、次から次に料理を口に運んでは、リスのように頬を膨らませて咀嚼する。




 (ブライアンがどのくらいすごい占い師なのかはわからないけど、俺の秘密がバレたら大変だもんな…
それにジャックだって……)



ちらりと盗み見たジャックが、さほど慌てずに料理を口に運んでいるのを見て、フレイザーはほっと胸を撫で下ろした。

 
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