STORY BOXⅡ

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
104 / 115
079.久遠の絆

しおりを挟む
次の朝、アーロンがいなくなったことで町は大騒ぎになっていた。
アーロンの父親がクレアの家に訪ねて来たが、クレアはなにも知らないと答えた。
それは嘘でもあり、真実でもあった。
クレアは、彼がどこに行こうとしていたかは一切聞いていなかったのだから。



アーロンの父親は八方手を尽くしてアーロンの行方を探したが、その行方はようとして知れなかった。
クレアもアーロンのことを想っては、日々辛い毎日を送っていたが、アーロンからは手紙の一通も届く事はなかった。



やがて、歳月は流れ、クレアは28歳の時に5つ年上のディランと結婚し町を離れた。
 真面目で誠実なディランとの結婚生活は、燃えるような情熱こそなかったが、穏やかで満ち足りたものだった。
 長い間実家を苦しめていた借金の返済もやっと終わり、弟のラリーも学校を出て働き始め、クレアの心配の種がなくなったことで、クレアもようやくディランとの結婚を決意したのだった。
 幸せな日々の中でも、クレアは時折アーロンのことを思い出す事があった。
 「あの日」以来、何の連絡もなく、誰一人として噂さえ聞いたことがないアーロン。
それは、若き日の甘酸っぱい恋の記憶にしては大きく重いものだった。



 (ディランと結婚したのに、まだあなたのことが忘れられない…
きっとあんな別れ方をしたせいね。
いつの日か、あなたに会って謝りたい。
そして、本当はあなたと一緒に行くつもりだったことを伝えたい!)

そんな想いをクレアは胸の奥深くに隠しつつ、ディランとの生活は順調に続いた。
 子供には恵まれなかったが、二人の暮らしは人並みの幸せを保ち、ずっとその幸せが続くものだと感じていた。
そんな矢先、ディランが職場の事故であっけなくこの世を去った。
クレアが50を少し過ぎた時のことだった。
 会社から出た賠償金のおかげで、クレアが生活に困る事はなかったが、ディランがいなくなったことで、クレアの心にはぽっかりと大きな穴があいたようだった。
 魂の抜けたような毎日を過ごしていたある日、クレアは今まで感じたことのない胸の痛みを感じ、病院に担ぎこまれた。
 医師から告げられた言葉は、残酷なものだった。
クレアの心臓はすでに手の施しようがない状態で、もってあと1年だろうということだった。
 年老いた両親や弟はそのことで大きなショックを受け、それでもなんとか治療法を探してほしいと医師に懇願したが、クレアはそのことを特に悔やむことはなく、むしろディランが迎えに来てくれたのだと感じ受け入れた。
クレアのただ一つの心残りはアーロンのこと。
クレアは伝えきれなかった想いを手紙に書いて書き残そうかとも考えたが、その手紙がアーロンの手に渡る可能性は極めて少ない。
 関係のない人に見られるのがいやで、クレアは書き遺すことを躊躇った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...