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衝動

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『そうか。わかった…』

「…やっぱり、おまえもついて来るんだよな?」

『…ついて来る…?
おまえが私を連れていくのだろう?』

エレスはそういうと、ジュリアンの皮袋を指差した。

言われてみればその通り。
エレスはこのエレスチャル自身なのだから…

我ながらくだらない質問をしたものだと、ジュリアンは小さな溜め息を吐いた。
つねった頬が痛かったからといってもまだすべてを信じているわけではない。
しかし、今、そのことを悩んでいてもきっと答えは出ないことだろう。
まったくもっておかしな話ではあるが、受け入れるか受け入れないかしかないのだ。
ジュリアンは、エレスが見えているという現実を受けいれることにした。

旅立つ準備を整えジュリアンが階下に降りていくと、そこにはたくさんの人々が集まり、その場はただならぬ雰囲気に包まれていた。



「どうしたんだ?
何かあったのか?」

ジュリアンが一人の男に声をかけた。



「あぁ…可哀想にな…
小さな男の子が崖から落ちてな…」

「助からなかったのか?」

「あぁ…落ちた所に大きな岩があったらしくてな…それで頭を打ったらしい…」

「そいつは気の毒な話だな…」

「なんでもその子はここの孫らしくってな。
女将が昨夜客からもらった水晶を見せたら、坊主がそいつをたいそう気に入って、自分もそんな水晶を取ってくるってでかけたらしいんだ…」

「えっ!?水晶を…?」

「女将が危ないからって追い掛けたらしいんだが追い付かず、女将の目の前で崖から落ちたらしくてな…」

「…な…なんてことだ…」

ジュリアンの身体はガタガタと震え始めた。
自分が女将に水晶を渡したばっかりにとんでもないことになってしまったと、自分を責めた。



いたたまれなくなったジュリアンはそのまま外に飛び出した。



『どうした…?』

「…今の話、聞いていただろう?
俺が女将に水晶をやったせいで…」

『…そうではないだろう?
子供は自分の意思で水晶を取りに行き、そして、自分のミスで崖から落ちたのだ。』

「おまえ、よくもそんな冷たいことが言えるな!」

『…しかし、それが事実ではないか…』

「もう良いっ!おまえの顔なんて見たくない!
どこかへ失せろ!」

『……子供を助けたいのか?』

「今更、何が出来ると言うんだ!子供はもう死んだんだ!
向こうへ行けよ!」

激しい剣幕でそう言うジュリアンに少しもひるむことなく、エレスはその場所を離れなかった。



『……忘れたのか?
昨夜、私はおまえにスペシャルな贈り物をやったではないか…』

「スペシャルな贈り物…?」



 
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