382 / 761
side 和彦
7
しおりを挟む
「確かに、カズさんは動物的なカンしてるからなぁ。」
「なんだよ、シュウ…
俺はかばか!」
くだらない冗談に、美幸がくすっと笑う。
「あ、そういえば、なんで『カズさん』なんですか?」
「え…?」
高坂はちょっと困ったような顔をして俺をみつめた。
確かに、おかしい。
高坂の名前は隆二(りゅうじ)なのに、なんで…
「もしかして……」
そう言って、シュウまでもが俺の顔をみつめる。
高坂は照れくさそうに笑って、ゆっくりと口を開いた。
「おまえも動物的なカンしてるよな。
そう…その通りだ。
こんなこと言っても信じてもらえるかどうかわからないけど…俺は別れてからも、和彦のことを忘れたことはなかった。
だから、カズという名前をもらった。
周りからカズって呼ばれる度に和彦のことが思い出された。
寂しさもそれで紛れた。
一緒にはいられなくても、その名前のおかげでどこかで繋がっていられるような気がしたんだ。」
それはちょっとショックな言葉だった。
俺は、父親への思慕はまるでなかった。
だから、俺のことをそんなに想ってくれてたなんてことも、考えてもみなかった。
俺が忘れているのと同じく、父親も俺のことは忘れてるって思ってたんだ。
「……これ。」
高坂は、財布の中から小さな写真を取り出した。
それはまだ若い頃の母に抱かれる、赤ん坊の俺だった。
「これが母さんと兄さん??」
「そうだよ…面影があるだろう?」
「こんな写真から大人になった兄さんがわかったなんて…
しかも、青木和彦なんてどこにでもある名前なのに…」
「……この頃のまんまだよ。
少しも変わっちゃいない…」
高坂は目を細め、静かに笑った。
「和彦…本当にすまなかったな。
俺のこと、恨んでただろう?」
「いえ……」
恨むもなにも、俺には生まれた頃から父親は痕跡すらもなかったのだから。
ただ、母親の愚痴はしょっちゅう聞いていたから、悪い父親だと言う印象はあった。
「本当に俺は馬鹿だった。
真樹子に捨てられて初めて、俺は大切なものを失ったことに気付いた。
でも、もう遅かった。
あいつは一度決めたことを覆すような女じゃない。
俺が何を言おうと、もうやり直すことは出来なかったんだ…」
絞り出すようなその言葉に、俺は高坂の苦悩を見たような気がした。
「なんだよ、シュウ…
俺はかばか!」
くだらない冗談に、美幸がくすっと笑う。
「あ、そういえば、なんで『カズさん』なんですか?」
「え…?」
高坂はちょっと困ったような顔をして俺をみつめた。
確かに、おかしい。
高坂の名前は隆二(りゅうじ)なのに、なんで…
「もしかして……」
そう言って、シュウまでもが俺の顔をみつめる。
高坂は照れくさそうに笑って、ゆっくりと口を開いた。
「おまえも動物的なカンしてるよな。
そう…その通りだ。
こんなこと言っても信じてもらえるかどうかわからないけど…俺は別れてからも、和彦のことを忘れたことはなかった。
だから、カズという名前をもらった。
周りからカズって呼ばれる度に和彦のことが思い出された。
寂しさもそれで紛れた。
一緒にはいられなくても、その名前のおかげでどこかで繋がっていられるような気がしたんだ。」
それはちょっとショックな言葉だった。
俺は、父親への思慕はまるでなかった。
だから、俺のことをそんなに想ってくれてたなんてことも、考えてもみなかった。
俺が忘れているのと同じく、父親も俺のことは忘れてるって思ってたんだ。
「……これ。」
高坂は、財布の中から小さな写真を取り出した。
それはまだ若い頃の母に抱かれる、赤ん坊の俺だった。
「これが母さんと兄さん??」
「そうだよ…面影があるだろう?」
「こんな写真から大人になった兄さんがわかったなんて…
しかも、青木和彦なんてどこにでもある名前なのに…」
「……この頃のまんまだよ。
少しも変わっちゃいない…」
高坂は目を細め、静かに笑った。
「和彦…本当にすまなかったな。
俺のこと、恨んでただろう?」
「いえ……」
恨むもなにも、俺には生まれた頃から父親は痕跡すらもなかったのだから。
ただ、母親の愚痴はしょっちゅう聞いていたから、悪い父親だと言う印象はあった。
「本当に俺は馬鹿だった。
真樹子に捨てられて初めて、俺は大切なものを失ったことに気付いた。
でも、もう遅かった。
あいつは一度決めたことを覆すような女じゃない。
俺が何を言おうと、もうやり直すことは出来なかったんだ…」
絞り出すようなその言葉に、俺は高坂の苦悩を見たような気がした。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。
NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。
中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。
しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。
助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。
無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。
だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。
この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。
この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった……
7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか?
NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。
※この作品だけを読まれても普通に面白いです。
関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】
【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
本日は桜・恋日和 ーツアーコンダクター 紫都の慕情の旅
光月海愛(こうつきみあ)
恋愛
旅は好きですか?
派遣添乗員(ツアーコンダクター)の桑崎紫都32歳。
もう、仕事がらみの恋愛はしないと思っていたのに…ーー
切ない過去を持つ男女四人の二泊三日の恋慕情。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる