1ページ劇場①

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
16 / 239
落ち葉の数だけあなたにあげる

しおりを挟む
「はぁ~~っ……」

俺が吐き出した大きな溜め息は、決してこの紅葉にセンチメンタルな気分を感じたせいではない。
溜め息の原因は、俺の掌の小さなコイン達…
243円であと5日過ごさなければいけないからだ。



あたりには燃えるようなもみじの葉や、黄色く色付いた銀杏がこの殺風景な公園を美しく彩って…
落ち葉の絨毯が一面に広がっている。



たぬきでもきつねでも良いから、この落ち葉をお札に変えてくれないものか?
変えてくれたら、一年分の油揚げ…いや、庭付きの一軒家を買ってやるのに……



(……って、ここの落ち葉って一体何枚あるんだろう?
これを全部一万円札に変えたら一体いくらになるんだ?
千円札だって相当な額になるんじゃないか?)


馬鹿馬鹿しい。
金がなさ過ぎて、俺は少々頭がイカレてしまったのかもしれない。
なんせ、職をなくしてそろそろ一月。
かなり切羽詰った状況なんだ。
もちろん、何軒も面接に行ったけど、バイトさえみつからない。



「そうね…じゃあ、ここの落ち葉の枚数をあてられたら、その枚数分のお金をあげるわ。」

「……え?……わっっ!」

いつの間に来たのか、俺のすぐ傍には金色の髪をしたつり目の女の子が立っていて……



「明日、朝日が上るまでよ。
この公園内の落ち葉全部の枚数ね。」

「……は?……げげーーーーっ!」

突然、女の子は姿を消した。
俺は何度も目をこする。



ば、ばかな…そんなことあるもんか……
理性はそう言う。



世の中には信じられないようなこともあるもんだ。
もう一人の俺が言う。



俺はどうするべきか考えたが、今の俺には金はないが時間はある。
駄目で元々、暇潰しにやってやる!

俺は、一旦家に戻り、ゴミ袋と懐中電灯を手に戻った。
あててやる!
絶対に当ててやる!

俺は落ち葉を拾い始めた。



甘かった…落ち葉は拾えども拾えどもなかなか拾いきれない。
気が付けば、大きなゴミ袋は9袋がもうぱんぱん。



えっと、これで、343144枚…と。
この分なら多分夜明けまでに400000枚以上はいけそうだ…
400000円あれば、しばらくは暮らせる…
あ、そうか、数えるだけじゃだめなんだ!
全部拾って枚数を当てないと…!

俺はピッチを上げた。
一睡もせず、落ち葉を数えながら、俺は公園中の落ち葉を拾いまくった。



朝日が姿を現したのを見て俺はばんざいと両手を上げた。
一晩で405468円稼げる奴なんて、そうそういないぞ。
その時、強い風が吹いてはらはらと落ち葉が舞い落ちる…



あ……



朝日が上りきった時、どこかで声が聞こえた。



「残念賞~~」



それはつまり、今の数枚が拾えなかったからだめだってこと…?
俺は、今までの疲れがどっと出てその場に座りこんだ。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】瑠璃色の薬草師

シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。 絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。 持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。 しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。 これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。

愚かな貴族を飼う国なら滅びて当然《完結》

アーエル
恋愛
「滅ぼしていい?」 「滅ぼしちゃった方がいい」 そんな言葉で消える国。 自業自得ですよ。 ✰ 一万文字(ちょっと)作品 ‪☆他社でも公開

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」 イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。 対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。 レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。 「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」 「あの、ちょっとよろしいですか?」 「なんだ!」 レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。 「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」 私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。 全31話、約43,000文字、完結済み。 他サイトにもアップしています。 小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位! pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。 アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。 2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

愛はリンゴと同じ

turarin
恋愛
学園時代の同級生と結婚し、子供にも恵まれ幸せいっぱいの公爵夫人ナタリー。ところが、ある日夫が平民の少女をつれてきて、別邸に囲うと言う。 夫のナタリーへの愛は減らない。妾の少女メイリンへの愛が、一つ増えるだけだと言う。夫の愛は、まるでリンゴのように幾つもあって、皆に与えられるものなのだそうだ。 ナタリーのことは妻として大切にしてくれる夫。貴族の妻としては当然受け入れるべき。だが、辛くて仕方がない。ナタリーのリンゴは一つだけ。 幾つもあるなど考えられない。

君に恋していいですか?

櫻井音衣
恋愛
卯月 薫、30歳。 仕事の出来すぎる女。 大食いで大酒飲みでヘビースモーカー。 女としての自信、全くなし。 過去の社内恋愛の苦い経験から、 もう二度と恋愛はしないと決めている。 そんな薫に近付く、同期の笠松 志信。 志信に惹かれて行く気持ちを否定して 『同期以上の事は期待しないで』と 志信を突き放す薫の前に、 かつての恋人・浩樹が現れて……。 こんな社内恋愛は、アリですか?

初恋が綺麗に終わらない

わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。 そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。 今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。 そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。 もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。 ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。

処理中です...