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誰にも言えない初夢
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「正月休みなんてあっという間だったなぁ…」
「本当だな、年末はお袋にこき使われて、全然ゆっくり出来なかったよ。」
今年の初出勤は4日だった。
まだ皆どこか正月気分が抜けきらず、久し振りに顔を合わせた同僚達のお昼休みの話題もやっぱり正月関連の事ばかりだった。
「初詣は行った?」
「正月太りしたよ。」
そんな話が飛び交う中、俺が密かに避けていた話題がついに飛び出した。
「そうそう、俺、すっごい夢見たんだ!」
「夢って初夢か!?」
夢の話ってやつは妙におかしかったりするもので、そこから皆の初夢話が始まった。
芸能人と会った夢だとか、焼肉を食べてる夢だとか、皆が自分の見た初夢の話をしている間、俺は話をふられないように携帯をいじってるふりをした。
「おい、岡田。
おまえはどんな初夢見たんだ?」
「初夢?そんなの見てないよ。
酒飲んで熟睡してたからな。」
俺は携帯をいじる手を止めず、素っ気無く答えた。
「熟睡してても夢は見るだろ!
きっとすっかり忘れたんだな。それって老化だぜ。」
西山の一言で、その場がどっとわいた。
笑いたけりゃ笑うが良いさ。
だけど、最後に笑うのは俺なんだ。
あとしばらくしたら、俺は……
俺が見た初夢は、初日の出を見ている夢だった。
なぜだか俺の家の窓から富士山が見えて、眩い日の出が顔を出すと、一羽の鷹が空を悠然と羽ばたいた。
そして、新聞が来て、俺はその新聞を開き、宝くじの当選番号を確かめていた。
一等の当選番号と俺の持っていた宝くじの番号はどんぴしゃり!
宝くじが当たった!って所で目が覚めたんだ。
これが正夢であることを俺は直感した。
なすびこそ出て来てはいないものの、富士山と鷹…しかも日の出だ。
第一、俺はその当選番号を目が覚めても記憶してたんだから!
俺はすぐさまその番号の宝くじを買いに行った。
通しでなんて買わない。
俺が買ったのは一枚だけだ。
昔からよく言われる。
良いことは人に話すなって。
人の妬みを買うからだろう。
いや、当たってからだって俺は誰にも話さない。
大金はトラブルの元だ。
誰にも何も言わないに限る。
俺は、宝くじを棚の上に供え、使い道を考えながら発表の日を心待ちに過ごした。
*
「嘘っ!」
ついに発表された当選番号は、俺が買ったものとはかすってもいない。
そんな馬鹿な…何度も確かめたがやはり間違いない。
だが、それでも俺はまだ信じられなくて窓口に駆けこんだ。
「こ、これ!当たってる筈なんですけど!」
宝くじをおばちゃんが調べてくれて、そしてにっこり微笑んだ。
「大当たり~!」
「や…やっぱり…」
ほっと胸を撫で下ろす。
「はい!三百億円の大当たりです!」
俺に手渡されたのは三枚の百円玉だった。
「本当だな、年末はお袋にこき使われて、全然ゆっくり出来なかったよ。」
今年の初出勤は4日だった。
まだ皆どこか正月気分が抜けきらず、久し振りに顔を合わせた同僚達のお昼休みの話題もやっぱり正月関連の事ばかりだった。
「初詣は行った?」
「正月太りしたよ。」
そんな話が飛び交う中、俺が密かに避けていた話題がついに飛び出した。
「そうそう、俺、すっごい夢見たんだ!」
「夢って初夢か!?」
夢の話ってやつは妙におかしかったりするもので、そこから皆の初夢話が始まった。
芸能人と会った夢だとか、焼肉を食べてる夢だとか、皆が自分の見た初夢の話をしている間、俺は話をふられないように携帯をいじってるふりをした。
「おい、岡田。
おまえはどんな初夢見たんだ?」
「初夢?そんなの見てないよ。
酒飲んで熟睡してたからな。」
俺は携帯をいじる手を止めず、素っ気無く答えた。
「熟睡してても夢は見るだろ!
きっとすっかり忘れたんだな。それって老化だぜ。」
西山の一言で、その場がどっとわいた。
笑いたけりゃ笑うが良いさ。
だけど、最後に笑うのは俺なんだ。
あとしばらくしたら、俺は……
俺が見た初夢は、初日の出を見ている夢だった。
なぜだか俺の家の窓から富士山が見えて、眩い日の出が顔を出すと、一羽の鷹が空を悠然と羽ばたいた。
そして、新聞が来て、俺はその新聞を開き、宝くじの当選番号を確かめていた。
一等の当選番号と俺の持っていた宝くじの番号はどんぴしゃり!
宝くじが当たった!って所で目が覚めたんだ。
これが正夢であることを俺は直感した。
なすびこそ出て来てはいないものの、富士山と鷹…しかも日の出だ。
第一、俺はその当選番号を目が覚めても記憶してたんだから!
俺はすぐさまその番号の宝くじを買いに行った。
通しでなんて買わない。
俺が買ったのは一枚だけだ。
昔からよく言われる。
良いことは人に話すなって。
人の妬みを買うからだろう。
いや、当たってからだって俺は誰にも話さない。
大金はトラブルの元だ。
誰にも何も言わないに限る。
俺は、宝くじを棚の上に供え、使い道を考えながら発表の日を心待ちに過ごした。
*
「嘘っ!」
ついに発表された当選番号は、俺が買ったものとはかすってもいない。
そんな馬鹿な…何度も確かめたがやはり間違いない。
だが、それでも俺はまだ信じられなくて窓口に駆けこんだ。
「こ、これ!当たってる筈なんですけど!」
宝くじをおばちゃんが調べてくれて、そしてにっこり微笑んだ。
「大当たり~!」
「や…やっぱり…」
ほっと胸を撫で下ろす。
「はい!三百億円の大当たりです!」
俺に手渡されたのは三枚の百円玉だった。
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