1ページ劇場①

ルカ(聖夜月ルカ)

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痛い愛情

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「良い天気だね。」

「本当…それに、風が心地良いわ。」




高く青い空を見上げて、僕らは顔を見合せて微笑んだ。
広大な敷地を持つこの屋敷で、僕は何不自由ない生活を過ごしている。



「イライザ…愛してるよ。
君と一緒にいられて、僕はとても幸せだ。」

「……私もよ。」

優雅に微笑む彼女の顔は、美しいと同時にどこか冷やかで、僕はいつも不安な気持ちを感じさせられる。



いや…そんなつまらないことを考えるのは止そう。
今の僕はこの上なく幸せなんだから…その現実をただ素直に受け入れよう。



(イライザ…僕の愛しい人……)









「あの…こちら、よろしいかしら?」

読んでいた本から目を逸らし、見上げた声の主に僕ははっと息を飲んだ。
こんな下町のカフェにいるには不似合いなその女性は、まるで女神のように見えた。



「え…あ、あの、す、すみません。
そ、そこには、もうすぐ…」

「ロジェーーー!」

ちょうどそこへ待ち合わせをしていた恋人・マリーが駆けて来て、僕はほっと胸を撫で下ろした。
女性は、冷たい視線でマリーを一瞥し、何も言わずその場を立ち去った。



たまたま僕に関心を示しただけ…きっと、もう二度と会うこともないと思っていた女性との再会は意外にもそれから数日後のことだった。
彼女は若くて美しいだけではなく、その身なりや所作から察するに、裕福で育ちの良い女性だと思われた。
そんな彼女が、なぜ僕なんかに関心を持つのかわからなかったけど、彼女は度々僕の前に現れた。
だけど、僕と彼女では住む世界が違う。
僕は近々マリーと結婚することを決めていたし、彼女に憧れのようなものを感じることはあっても、それが愛情に変わることはなかった。

そんな、ある時…僕は彼女に飲みに行こうと誘われた。
僕は、それに快く応じた。
マリーと結婚する事をはっきりと話そうと思ったからだった。
彼女の好意はありがたいが、僕にはそれ以上の気持ちはなかったし、マリーを不安にさせるのもいやだったからだ。

しかし、そこで悲劇が起こった。
素直に話を聞いてくれる彼女にほっとしてしまったのか、不覚にも泥酔してしまい、僕が目を覚ましたのはマリーの悲痛な叫び声によってだった。
酔い潰れた僕は、いつの間にか家に戻っていて、そして、僕の隣には裸の彼女がいたのだから。



けれど、そんな危機も、僕達はなんとか乗り越えた。
僕が、酔い潰れて具合が悪そうだと、わざわざマリーに知らせに行った男がいたというのもどうにも不自然な話だった。
僕らは結婚の予定を早めることにした。

しかし、結婚式の日取りも決まったちょうどその頃……
マリーは忽然と僕の前から姿を消した。
まるで、神隠しにでもあったように、マリーは誰にも何も言わず、姿を消してしまったんだ。

 
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