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痛い愛情
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*
彼女との生活はその後も何も変わりはなかった。
ただ…彼女が結婚相手の所に戻る時だけは、いつも喧嘩になった。
それは、もちろん、僕の見苦しい嫉妬心から。
彼女が、他の男と一緒にいると思うだけで、僕は気が狂いそうになった。
彼女に会いに行きたい。
でも、この鉄条網を越えた所には、あの獰猛な犬達がいる。
以前のことを思い出すと、ガタガタと身体が震えた。
だけど、ある時、どうしてもその気持ちが押さえきれず…
彼女に会いたい気持ちが、犬達の恐怖に勝った。
血を流し、鉄条網を乗り越え、そして、僕はまた犬達に襲われて……
「……イライザ……戻って来てくれたんだね。」
目を開けた時、僕の傍には彼女がいた。
彼女が僕のことを心配して戻って来てくれたことが嬉しくて、身体の痛さも苦にはならなかった。
「私……聞き分けの悪い人は嫌いだわ。」
その声はとても冷たいものだった。
「ご、ごめん…でも、僕……」
「……でも、あなたのことは大好きなの。
だから……あなたがもう逃げないようにすることに決めたわ。」
彼女はそう言うと、扉が開き、数人の男が部屋に雪崩れ込む。
その中の一人の男の手には大きな斧が握られ、研ぎ澄まされた刃が光っていた。
「……イライザ…な、何を……」
「大丈夫よ。車椅子もすぐに用意させるから……」
彼女は天使のように微笑み、男達は、僕の全身を押さえつけた。
「イ、イライザ……ぼ、僕、もう二度とあんなことはしない!」
彼女は何も答えず、斧を持った男に向かって小さく頷いた。
その瞬間、男は斧を高く振りかざし、
そして……
*
僕はもう逃げることも走ることも出来ない。
だけど、彼女は以前とは少しも変わらず、僕に優しくしてくれる。
「ねぇ…今度はいつ来てくれる?」
「……子供みたいなこと言うのね。」
「だって……君がいないと本当に寂しいんだもの。」
「……あなたは本当に可愛い人ね。」
腰をかがめ、彼女は僕の唇に優しく口付けた。
幸せだ。
こんなに愛されている僕は、本当に幸せ者だ。
「イライザ……僕の天使……」
僕は、彼女の腕に手を回し、その赤い唇を激しく求め続けた。
~fin
彼女との生活はその後も何も変わりはなかった。
ただ…彼女が結婚相手の所に戻る時だけは、いつも喧嘩になった。
それは、もちろん、僕の見苦しい嫉妬心から。
彼女が、他の男と一緒にいると思うだけで、僕は気が狂いそうになった。
彼女に会いに行きたい。
でも、この鉄条網を越えた所には、あの獰猛な犬達がいる。
以前のことを思い出すと、ガタガタと身体が震えた。
だけど、ある時、どうしてもその気持ちが押さえきれず…
彼女に会いたい気持ちが、犬達の恐怖に勝った。
血を流し、鉄条網を乗り越え、そして、僕はまた犬達に襲われて……
「……イライザ……戻って来てくれたんだね。」
目を開けた時、僕の傍には彼女がいた。
彼女が僕のことを心配して戻って来てくれたことが嬉しくて、身体の痛さも苦にはならなかった。
「私……聞き分けの悪い人は嫌いだわ。」
その声はとても冷たいものだった。
「ご、ごめん…でも、僕……」
「……でも、あなたのことは大好きなの。
だから……あなたがもう逃げないようにすることに決めたわ。」
彼女はそう言うと、扉が開き、数人の男が部屋に雪崩れ込む。
その中の一人の男の手には大きな斧が握られ、研ぎ澄まされた刃が光っていた。
「……イライザ…な、何を……」
「大丈夫よ。車椅子もすぐに用意させるから……」
彼女は天使のように微笑み、男達は、僕の全身を押さえつけた。
「イ、イライザ……ぼ、僕、もう二度とあんなことはしない!」
彼女は何も答えず、斧を持った男に向かって小さく頷いた。
その瞬間、男は斧を高く振りかざし、
そして……
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僕はもう逃げることも走ることも出来ない。
だけど、彼女は以前とは少しも変わらず、僕に優しくしてくれる。
「ねぇ…今度はいつ来てくれる?」
「……子供みたいなこと言うのね。」
「だって……君がいないと本当に寂しいんだもの。」
「……あなたは本当に可愛い人ね。」
腰をかがめ、彼女は僕の唇に優しく口付けた。
幸せだ。
こんなに愛されている僕は、本当に幸せ者だ。
「イライザ……僕の天使……」
僕は、彼女の腕に手を回し、その赤い唇を激しく求め続けた。
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