1ページ劇場①

ルカ(聖夜月ルカ)

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ストーブの前で

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「暖かいね。」

 「本当に気持ち良いね。」


めらめらと燃えるストーブの火の前で、頬を赤く染めた幼い子供達が微笑んだ。



 「お母さんもこっちにおいでよ。」

 痩せてやつれた母親は、黙って子供の隣に腰を降ろす。



 粗末なこの家の中には寒い季節になると隙間風が入る。
ガタガタと建てつけの良くない戸を鳴らして、冷たい風が遠慮なく入って来る。
 古ぼけたストーブは、なかなか灯油を入れられることはなく、ただの置物のようだった。
しかし、今日はそのストーブに命が吹き込まれた。
ストーブは、赤い炎を揺らし、部屋の中をじんわりと暖めた。
それだけではなかった。
クリスマスだからということで、鳥の唐揚げと小さな小さなケーキが食卓に並んだ。
 二人は、声を上げて喜び、ひとつしか乗っていないいちごを喧嘩もせずに半分に分け、幸せそうな顔で頬張った。



 「……おまえ達、そろそろ眠くなって来たんじゃないかい?」

 「うん……」

 下の妹は頷き、大きなあくびをした。
その瞼は今にもくっつきそうだった。



 「稔も……」

 「僕はまだ眠くないよ!
もう少し、この火を見ていたいんだ。」

 「この火を……?」

 少年は、母親をみつめ、大きく頷いた。



 「お母さん、今日はいろいろありがとうね。」

 「……え?」

 「唐揚げもケーキもすっごくおいしかったよ!
……でも…お金は大丈夫だったの?」

 少年は、火から目を離さず、まるで独り言のように呟いた。



 「あ、あのくらい、なんでもないよ。」

 「お母さん…僕ね…来年から働くから…」

 「なんだって?」

 「新聞配達させてもらうんだ。
 四年生になったら、させてくれるって、前から約束してたんだ。」

 少年はそう言って、母親に嬉しそうな笑みを見せた。



 「そんなこと……」

 「お母さん、僕が大きくなったらもっといっぱい働くから。
いつもストーブが焚けるように頑張るから…だから、あと少しだけ辛抱してね。」

 「稔……」

 母親は溢れそうになる涙を堪え、その場を離れた。
 流しの前に立つと、最期に三人で飲むために準備してあったジュースを、ぽたりとこぼれた涙と共に空け捨てた。


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