1ページ劇場①

ルカ(聖夜月ルカ)

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梅の花が咲きました

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「良い香りね。」

 「これだけあると圧巻だな。」

まだ肌寒いとはいえ、木々は緑に芽吹き、どこかしら春の訪れを感じさせていた。
そんなある日、私は夫とパック旅行で梅を見に来ていた。


 広大な敷地には数百本の梅の木が植えられ、ほのかに香る甘い香りがますます春を感じさせてくれる。


 「美穂、そこで一枚撮ろう。」

 「いいわよ、私は……梅の花だけ撮って。」

 優しい夫とは結婚してもう二十年が過ぎた。
 最初は、夫のことを本当に愛しているのかどうかよくわからなかった。
ただ…私にはとても良くしてくれた人だから……
それだけで、彼と結婚したものの、その後、後悔のようなものはひとつもなかった。
 今では、彼のことを愛していると確信している。


 「そうだ、一緒に撮ろうよ。」

 「いいってば。
こんなおじさんやおばさんより、梅の花を撮りましょうよ。」

 「何言ってるんだよ。
これから先はもっとおじさん、おばさん…いや、おじいさんとおばあさんになるんだよ。
その頃になったら、今日の写真を見て、あぁ、このころはまだ若かった…なんて思えるはずだよ。」

 「そうかしらねぇ…」

 「最近、全然一緒に撮ってないじゃないか。」

そりゃあそうよと言いかけて、私はその言葉を飲みこんだ。
こんなおばさんになっても、彼は私のことを大切にしてくれる。


 彼からは、何度プロポーズされたことだろう…
実は以前からずっと好きだったと告白された時は驚いた。
だって、私は彼の友達の彼女…
そんな私を好きだったなんて…
その頃、私の心の中にはいなくなった雅史さんがまだしっかりと残っていて、他の人のことなんて考えられるはずもなく…
彼がいなくなってから五年が過ぎてもまだ忘れることは出来なかった。
でも、七年が経った頃…私の心境に変化があった。

 彼はもうこの世にはいない…

皆が思っていたその現実を、私はようやく受け入れることが出来た。
そう思うと、まるで心にぽっかりと大きな穴が開いたみたいで…もうなにもかもがどうでも良いような気持ちになっていた。
そんな私を救ってくれたのが今の夫だ。
 彼は、少しずつ私の心の隙間を埋めてくれた。
それだけじゃない。
 彼はそこにいたるまでの七年も、辛抱強く私を支えていてくれた。


 (だから、今、こんなに幸せなのよね。)



 「ね、じゃあ、誰かに撮ってもらいましょうよ。」

 「そうだね!…誰か……」

あたりを見渡すうちに、私達の視線は同じところで止まった。


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