極悪な悪役貴族に転生したが、最弱設定の操作魔法を過剰な努力で極めて作中最強になる~俺を断罪するヒロインを助けたら、全員ヤンデレ化して離れない

青空あかな

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第35話:常識破り(Side:ライラ①)

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 戦友で旧友のアレキサンダーから久しぶりに連絡がきた。
 何かと思ったら、息子の家庭教師の依頼だった。
 ギルベルト・フォルムバッハと言えば、有名なゴミ令息だ。
 貴族社会に疎い私でも、悪評の数々を知っている。
 立場や権力を利用する嫌われ者という印象だ。
 まったく気乗りしなかったが、戦友の頼みなので渋々引き受けた。

 直接見るギルベルトはムカつく顔だったな。
 局部の蹴りがいもない。
 これほどやる気のない依頼は初めてだ。
 だが、一度仕事を引き受けた以上、私は最後までやり遂げる。
 それがゴミ令息の家庭教師でも同じ。
 目の前の仕事に全力で取り組むことが、己を一番成長させるのだ。

 ギルベルトの目標は、“ルトハイム魔法学園”の首席合格らしい。
 王国最高峰である学園への首席合格。
 生半可な努力ではとうてい達成できない。
 悪評猛々しいギルベルトが、なぜそのような高い目標を抱いているのかはわからない。
 その裏には別の目的がありそうな気もするが深読みはせず、私はあいつを鍛えることにした。

 とは言ったものの、ギルベルトの魔法系統は操作魔法と聞いたとき、正直無理なのでは、と私は感じた。
 あらゆる系統の中でも最弱クラスなのだから。
 “小石しか操れない魔法”に何の価値がある。
 石など手で投げた方が強い。
 せめて火魔法や水魔法など扱いやすい系統であれば、首席合格の可能性は十分にあった。
 しかし、嘆いても仕方がない。
 今ある手札の中から最善を尽くすのみだ。

 アレキサンダーから“経験の森”を使用してよいと言われたので、遠慮なく使わせてもらう。
 私も戦友のツテで入ったことがある。
 あそこは良い森だ。
 いるだけで経験値が貯まるのを感じる。
 十四歳の少年には厳しい環境だが、魔法系統と目標を考えると達成できる唯一の方法だ。
 まずは基礎的な体力作りから始めて、徐々に魔法系統を開発する。
 実際のところ、ギルベルトは基礎段階で修行を辞めるだろうと思っていた。
 生半可な内容ではない。
 私でも難儀するだろう。
 怠惰でめんどくさがりな人間に、やり遂げられるかは甚だ疑問だった。
 ……ところがどうだ。
 ギルベルトは根を上げなかった。
 毎日毎日、必死に修行に取り組む。
 さすがに死にそうにはなるが、指示した内容をきっちり果たす。
 走り込むあいつを見るうちに、徐々に私の評価も変わった。

 ギルベルトに操作魔法を使わせた日を、私は忘れないだろう。
 あいつは系統レベルが上がり、鉱石が操れるようになったと話した。
 信じられるわけもなく、出まかせを言われたのかと思った。
 局部の破壊を準備する中、ギルベルトが手をかざすと……大きめの鉱石が宙に浮いたのだ。
 あり得ない現象に、私は思わず呆然とした。
 今操作しているのは、誰が見ても小石ではない。

 ――操作魔法で……小石以外も操れるようになった。

 まさしく、“世の中の常識”が覆された瞬間だった。
 ギルベルトの努力は、常識さえも超えてしまったのだ。
 貴様に対する評価は完全に変わった。
 私も今まで以上に真剣な思いで指導することを決めた。

 後日ネリーから、貴様が自ら破壊した花畑を操作魔法で復活させてくれた、と聞いた。
 両親に〈流星花〉を供えることができてよかったと、彼女は大変に喜んでいたぞ。
 なかなかやるじゃないか。

 ハルミッヒ家では、カレンとギルベルトの確執に立ち会った。
 事の詳細は知らなかったが、その場にいたらなんとなくわかった。
 当時のカレンはギルベルトを信用できなかったようなので、少しだけ私の評価を伝えてやった。
 結果として、仲が修復されたようなので私も安心した。
 もちろん、一番大きな要因はギルベルトの努力だろうがな。


 この前、ネリーとカレンが修行に参加させてほしいと頼んできた。
 なぜかと問うと、なんとギルベルトが目標と伝えられた。
 メイドとして、婚約者として、二人はふさわしい人間になりたいそうだ。
 とうとうギルベルトは、周りの人間にまで影響を与えるようになったのか。
 あいつの成長ぶり、ポテンシャルの高さには驚かされるばかりだ。
 昼食のときはだらけきっているが、そこは目をつぶってやる。

 今や、局部の蹴りがいもだいぶ改善した。
 私も少なからず弟子を取ったことはあるが、その中でもギルベルトが一番筋が良い。
 
 ――ギルベルト、私は貴様を“常識破り”と認めてやる。

 最弱の操作魔法は、貴様の努力により最強の魔法になりつつある。
 貴様は世界の常識を変える素質があるのだ。
 これからも頑張れ。
 

 さて、弟子の活躍をもっと見たい自分がいるが、家庭教師の任期は一年だ。
 もちろん修行はまだまだ続くものの、ギルベルトたちが学園に入学したら私はお役御免となる。
 ギルベルトたちと関わることも減ると予想される。
 この依頼を受けたときは、早く任期が終われ、ということばかり考えていた。
 不思議なことに、もっとギルベルトの活躍を、成長を見たい自分がいた。
 あれほど有望な人材は、今後も直接指導するべきだ。
 どうするか、と考えたら一つの案が思い浮かんだ。

 ――私も……“ルトハイム魔法学園”に復職するか?

 誰にも言ったことはないが、私は学園で教鞭をとっていた時期がある。
 当然、生徒たちはほとんどが貴族。
 貴族の出身で冒険者をやる人間は少ないので、噂になることもなかったようだ。
 学園の教員ならば、ギルベルトの成長を間近で観察できる。
 ふむ、我ながら良い案だ。
 あいつはもちろんのこと、ネリーやカレンの行く末も気になるな。
 元極悪貴族がどこまで周りの人間を引き上げるのか、私は興味が惹かれる。
 何より……。

 ――師匠として優秀な弟子の成長を見守りたい。
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