極悪な悪役貴族に転生したが、最弱設定の操作魔法を過剰な努力で極めて作中最強になる~俺を断罪するヒロインを助けたら、全員ヤンデレ化して離れない

青空あかな

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第102話:夜の戦い①

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「急にお呼び立てしちゃって悪かったね」
「いえ、別に構いませんよ」
「ありがとう」

 秋の涼しい夜風が吹き抜ける中、俺は一人の女性と向かい合う。
 ボブカットにした濃い紫色の髪と、同じく紫色の猫っぽい瞳が活発な印象の女性。
 腰にはだらりと大きな鞄を下げている。
 
 ――キャロル・バートランド子爵令嬢。

 狼人族の里に向かう二年生だ。
 ライラ先生から魔導具修理の話があった後、彼女から果たし状が届いた。
 カレンたちに話したところ一緒に行くと言われたが、大丈夫だと断った。
 協力して魔導具の修理に臨みたいところだけど、そう簡単にはいかなそうだ。
 彼女の全身からは、敵対の魔力が滲み出る。

「なぜ……俺に果たし状なんて送ってきたんです?」

 そう尋ねると、キャロル先輩の顔が硬い表情に変わった。

「あたしはね、バートランド家の分家の出身なのよ。これはあたしが本家に認めれる重要な機会。だから、手を引いて? こちら側の事情で申し訳ないけど」

 彼女の話を聞いて、詳細な設定が思い出される。
 バートランド家は代々優秀な魔導具師や修復師を輩出してきた。
 ただ、本家と分家に分かれており、分家の人たちは虐げられがちという話だ。
 キャロル先輩は長女なので、分家全体の未来を背負っているのだ。
 たしかに、大事な事情ではある。
 分家の人たちの期待や希望を考えれば、一人で修理に臨みたい気持ちもわかる。
 だが……。

「お言葉ですが……俺は引き下がれません」
「……どうして?」

 キャロル先輩は首を傾けて尋ねる。
 どうして……? それは……。

「俺も国の未来を背負っているからです」

 カレン、ネリー、ルカ、ライラ先生、サロメ、父上、ニコラ先輩……。
 大事な人たちがたくさんいるこの世界を、俺は守りたい。
 フリードリヒとの戦いは、文字通り国の行く末を左右する。
 主要な補給路上に里がある狼人族との国交回復は絶対だ。
 彼女の腕を疑っているわけではないが、何もせず傍観することなどできない。
 素直な気持ちを伝えると、キャロル先輩は微笑みを讃えて俺を見た。

「……いい答えね。じゃあ、しょうがないか」
「そうなりますね」

 俺たちは互いに構える。
 果たし状の内容は……敗者は学園の頼みを辞退すること。
 この勝負は、絶対に負けられない。
 地面を力強く蹴り、思いっきり駆け出す。
 まずは距離を詰めて相手の出方を見る。
 キャロル先輩は逃げることなく、鞄から何かを取り出し俺に投げた。
 小さな木の皮だ。

 ――……なんだ? 木の欠片?

「《修繕》!」

 キャロル先輩が叫んだ瞬間、彼女の目的がわかった。
 走る態勢を崩し、寸でのところで躱す。
 木の欠片から修復された巨大な樹木を。
 態勢を立て直したところで、横たわった樹木の向こう側から、キャロル先輩の感心した声が聞こえた。
 
「やるじゃん、ギルベルト君。まさか、初見で避けられるとは思わなかった」
「独特の戦い方をしますね。破片を元の形に修復することで攻撃するなんて」
「ありがとう、褒めてくれて嬉しいね」

 修復魔法は戦闘タイプの系統ではないが、こんな使い方で攻撃を仕掛けてくるとは。
 さすが、国内最高峰の学園の二年生だ。
 キャロル先輩は鞄に手を突っ込む。

「種明かしも済んだことだし、遠慮なくいくよ。……《修繕》!」

 上空からはガラスや剣、樹木に岩……多種多様な物体が落ちてきた。
 ちょうど逃げ場がないように位置も計算されている。
 魔力を飛ばし、操作魔法で動きを止めた。
 直後、上を向いた視線の片隅で、剣が突き出されたのが見えた。
 身を屈めたキャロル先輩の姿も。
 《修繕》は囮。
 本命は近接戦というわけか。
 岩や木を宙に浮かべたまま、剣の一撃を躱す。
 操作魔法を習得した当初は、一度解除しないと激しい運動はできなかった。
 だが、今はもう維持したまま戦闘に移れる。
 両拳に魔力を込め、キャロル先輩の剣を殴った。

「《打突》!」
「うっ……《修繕》!」

 すぐに修復魔法で剣が復活するものの、さらに《打突》で折る。
 いくら一家相伝の得意な魔法でも、連発しては魔力の回復が間に合わない。
 それに、近接戦の地力は俺の方が高いのだろう。
 徐々に形成が傾き、剣を弾き飛ばした。

「……俺の勝ちですね、キャロル先輩」
「ぐぐ……!」

 キャロル先輩はがくりと膝をついた。
 操作魔法を解除し、数多の物体を地面に下ろす。
 戦いが終結しても、下を向いたままのキャロル先輩に手を差し伸べる。

「ありがとうございました。俺も成長できた気がします。修復魔法の使い手と戦う機会なんてあまりないですから」

 手を差し伸べるも、キャロル先輩は顔を上げない。
 どうしたんだろう、と思っていたら、小さなうめき声が彼女の口から漏れ出た。

「う……」

 う……?
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