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第6話:真実の愛
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「これからどうしよう……」
私はあてもなく街をさまよっていた。
今日の宿すら当てがない。
まだ昼間だけど、そのうち夜になってしまう。
まさか聖ガーデニー教会に泊まるわけにはいかないだろう。
お義母様にも家の周りをうろつくなと言われてしまった。
それにいつまでもうろうろしているのはあまり良くない。
なぜなら、世間はガーデニー家の跡取り娘、つまり私がルドウェン様と結婚すると思っている。
婚約者を義妹に奪われ、あっさりと婚約破棄されたことはいずれ知られることだけど、今は誰にも触れてほしくない。
――どこかの修道院でシスターにでもなろうかな。意外と向いているかも。
帽子を深く被っているので、幸いなことに周りの人たちはまだ私だと気づいていない。
しかし、ずっと隠し通すのはさすがに難しいだろう。
「やっぱりここにはいられないか」
私は小声でつぶやくと、国の外を目指して歩き始めた。
いったいどれくらい歩いたのか、もうわからない。
私は今、アトリス王国の外れにある山岳地帯にいた。
――あの山を越えれば、もう外の世界だわ。
いかに貴族の出身とはいえ、国外では厳しい生活になることは簡単に想像できる。
たとえガーデニー家の者だと言い張っても、今の私の身なりでは全く説得力がない。
――不安だけど、行くしかないわ。
私は覚悟を決めて、ゆっくりと歩き始めた。
この辺は切り立った崖のようなところも多く、足を踏み外せばその瞬間、死だ。
少し山を登ると、さっきまでいた街が見えた。
――街がもうあんなに遠く見えるわ。きっと、もう戻ることはないのね……。
今の自分の境遇とガーデニー家での日々を思い出すと、しんみりした気持ちになる。
気を取り直して歩こうとしたとき、うっかり崖から足を滑らせてしまった。
「きゃあああっ!!」
しまった! と思ったがもう遅かった。
勢いよく体が落ちていく。
――こんなところで私は死んじゃうの!?いや!誰か助けてーーーーーーー!
そう思ったとき、聞き覚えのある男性の叫び声が聞こえた。
「ロミリアー!」
え? と思った瞬間、アーベル様が私の腕を掴んでいた。
「大丈夫か、ロミリア!」
――ア、アーベル様がどうして!? 私は崖から落ちたんじゃないの!? もしかして、死んじゃった!?
驚きすぎて自分はもう死んでしまったのかと思った。
しかし、痛いほど掴まれている腕が現実だと教えてくれる。
「待ってて、今引き上げる!」
すぐにアーベル様はもの凄い力で私を引っぱり上げてくれた。
「ロミリア、大丈夫!?」
あぜんとしている私を、アーベル様は力いっぱい抱きしめた。
「あぁ、よかった。間に合わないかと思ったよ。こんなことになるなら、昨日の夜に求婚しておくべきだった」
「く……苦しいですわ、アーベル様」
私は息も絶え絶えに言う。
「ご、ごめん、ロミリア。あまりにも嬉しくて。け、怪我はないかい?」
「ええ、本当に助かりましたわ。危ないところを、誠にありがとうございました。アーベル様の方こそお怪我はございませんか?」
アーベル様の顔を見ると泣いていた。
「ど、どうされたのですか!?まさかどこか怪我して……」
「違うんだよ、ロミリア。君が生きていてくれて本当に良かったんだ。あぁ、良かった。本当に良かった……」
アーベル様はわんわんと泣いている。
――私のことをそんなに想ってくれるなんて……
私の心が温かい気持ちでいっぱいになっていく。
こんな気持ちになるのは初めてだった。
「アーベル様……」
もう一度お礼を言おうとしたとき、不意にアーベル様が正座をする。
「ロミリア・ガーデニーさん」
そして私を真正面から見つめた。
その深い海のような瞳でじっと見られると、心がドキドキしてしょうがない。
「は、はい。なんでしょうか、アーベル様」
私もつられて正座する。
「私の本名はアーベル・ハイデルベルクと申します。ハイデルベルク王国の正当な王子でございます」
え!? と言いそうになった。
気品が高そうな人だとは思ったが、まさか王子だったとは思わなかった。
しかもハイデルベルクと言えば、世界一の超大国だ。
私はいったい何をやらかしたのだろうか。
――ど、どうしよう、私何か失礼なことしちゃったっけ? あ! そういえば、昨日の夜がなんとかとかおっしゃっていたわ。もしかして、私の知らないうちに何か粗相が……
いろいろと心配しているのをよそに、アーベル様は話を続ける。
「あなたが今どのような状況におられるのかは、失礼ながら私はすでに知っております。婚約者に婚約破棄されたこと、家から追い出されたこと、全て知っております。知った上であなたを探し、ここまで追いかけて参りました」
どうやら私の心配しすぎらしい、とほっとした。
「それを踏まえた上で、今の私の真剣な気持ちをお伝えいたします」
――え、何かしら? とても真剣な目をされてるわ。
アーベル様が息を吸い一息に、そしてはっきりと言った。
「私と結婚して頂けませんか?」
一 瞬何を言っているのかわからなかった。
少しして、じわじわと喜びが溢れ出していくを感じる。
嬉しくって叫びだしそうなくらい! もちろん、答えは一つに決まっているわ!
「……はい、喜んで!」
私はあてもなく街をさまよっていた。
今日の宿すら当てがない。
まだ昼間だけど、そのうち夜になってしまう。
まさか聖ガーデニー教会に泊まるわけにはいかないだろう。
お義母様にも家の周りをうろつくなと言われてしまった。
それにいつまでもうろうろしているのはあまり良くない。
なぜなら、世間はガーデニー家の跡取り娘、つまり私がルドウェン様と結婚すると思っている。
婚約者を義妹に奪われ、あっさりと婚約破棄されたことはいずれ知られることだけど、今は誰にも触れてほしくない。
――どこかの修道院でシスターにでもなろうかな。意外と向いているかも。
帽子を深く被っているので、幸いなことに周りの人たちはまだ私だと気づいていない。
しかし、ずっと隠し通すのはさすがに難しいだろう。
「やっぱりここにはいられないか」
私は小声でつぶやくと、国の外を目指して歩き始めた。
いったいどれくらい歩いたのか、もうわからない。
私は今、アトリス王国の外れにある山岳地帯にいた。
――あの山を越えれば、もう外の世界だわ。
いかに貴族の出身とはいえ、国外では厳しい生活になることは簡単に想像できる。
たとえガーデニー家の者だと言い張っても、今の私の身なりでは全く説得力がない。
――不安だけど、行くしかないわ。
私は覚悟を決めて、ゆっくりと歩き始めた。
この辺は切り立った崖のようなところも多く、足を踏み外せばその瞬間、死だ。
少し山を登ると、さっきまでいた街が見えた。
――街がもうあんなに遠く見えるわ。きっと、もう戻ることはないのね……。
今の自分の境遇とガーデニー家での日々を思い出すと、しんみりした気持ちになる。
気を取り直して歩こうとしたとき、うっかり崖から足を滑らせてしまった。
「きゃあああっ!!」
しまった! と思ったがもう遅かった。
勢いよく体が落ちていく。
――こんなところで私は死んじゃうの!?いや!誰か助けてーーーーーーー!
そう思ったとき、聞き覚えのある男性の叫び声が聞こえた。
「ロミリアー!」
え? と思った瞬間、アーベル様が私の腕を掴んでいた。
「大丈夫か、ロミリア!」
――ア、アーベル様がどうして!? 私は崖から落ちたんじゃないの!? もしかして、死んじゃった!?
驚きすぎて自分はもう死んでしまったのかと思った。
しかし、痛いほど掴まれている腕が現実だと教えてくれる。
「待ってて、今引き上げる!」
すぐにアーベル様はもの凄い力で私を引っぱり上げてくれた。
「ロミリア、大丈夫!?」
あぜんとしている私を、アーベル様は力いっぱい抱きしめた。
「あぁ、よかった。間に合わないかと思ったよ。こんなことになるなら、昨日の夜に求婚しておくべきだった」
「く……苦しいですわ、アーベル様」
私は息も絶え絶えに言う。
「ご、ごめん、ロミリア。あまりにも嬉しくて。け、怪我はないかい?」
「ええ、本当に助かりましたわ。危ないところを、誠にありがとうございました。アーベル様の方こそお怪我はございませんか?」
アーベル様の顔を見ると泣いていた。
「ど、どうされたのですか!?まさかどこか怪我して……」
「違うんだよ、ロミリア。君が生きていてくれて本当に良かったんだ。あぁ、良かった。本当に良かった……」
アーベル様はわんわんと泣いている。
――私のことをそんなに想ってくれるなんて……
私の心が温かい気持ちでいっぱいになっていく。
こんな気持ちになるのは初めてだった。
「アーベル様……」
もう一度お礼を言おうとしたとき、不意にアーベル様が正座をする。
「ロミリア・ガーデニーさん」
そして私を真正面から見つめた。
その深い海のような瞳でじっと見られると、心がドキドキしてしょうがない。
「は、はい。なんでしょうか、アーベル様」
私もつられて正座する。
「私の本名はアーベル・ハイデルベルクと申します。ハイデルベルク王国の正当な王子でございます」
え!? と言いそうになった。
気品が高そうな人だとは思ったが、まさか王子だったとは思わなかった。
しかもハイデルベルクと言えば、世界一の超大国だ。
私はいったい何をやらかしたのだろうか。
――ど、どうしよう、私何か失礼なことしちゃったっけ? あ! そういえば、昨日の夜がなんとかとかおっしゃっていたわ。もしかして、私の知らないうちに何か粗相が……
いろいろと心配しているのをよそに、アーベル様は話を続ける。
「あなたが今どのような状況におられるのかは、失礼ながら私はすでに知っております。婚約者に婚約破棄されたこと、家から追い出されたこと、全て知っております。知った上であなたを探し、ここまで追いかけて参りました」
どうやら私の心配しすぎらしい、とほっとした。
「それを踏まえた上で、今の私の真剣な気持ちをお伝えいたします」
――え、何かしら? とても真剣な目をされてるわ。
アーベル様が息を吸い一息に、そしてはっきりと言った。
「私と結婚して頂けませんか?」
一 瞬何を言っているのかわからなかった。
少しして、じわじわと喜びが溢れ出していくを感じる。
嬉しくって叫びだしそうなくらい! もちろん、答えは一つに決まっているわ!
「……はい、喜んで!」
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