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第46話:ゴーレムを救いました
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「大丈夫だからね。今闇魔法から解放してあげるから」
〔ギィッ!〕
私たちが近づくと、小鳥ゴーレムは羽を激しくばたつかせる。
目も怖そうに赤く光っていた。
バーチュさんとフローズさんも対応に苦慮しているようだ。
「やはり、闇魔法によって凶暴化しているようです。あそこまで人間に敵意を示すとは」
『ゴーレムは元々人間に忠実なはずなんだがなぁ』
慎重に近づきつつ、私は昔学んだことを思い出していた。
フローズさんの言うように、ゴーレムは人間が作った物だ。
心を通わせれば、それこそ本当の動物のように接してくれると聞いたことがある。
闇魔法に侵食されていても、まだあの子の心は生きているかもしれない。
だったら……。
ずいっとバーチュさんたちより前に出る。
「こんにちは、小鳥のゴーレムさん。私はキュリティ。あなたにお名前はあるのかな?」
〔ギ!〕
「お、奥様! 危ないですから後ろに……!」
「いえ、まずは対話させてください。きっと、あの子も不安なんです。だから、少しでも恐怖心を和らげてあげるのが大事だと思います」
あの小鳥ゴーレムは不安でいっぱいなのだ。
魔族領に置いていかれ、闇魔法に侵食され、馴染みのない土地に迷い込んで……その不安や恐怖は言葉にできないだろう。
ゴーレムと対話を続ける。
「闇魔法って苦しいよね。私は<解呪>の力があってね、王宮で荷物の検査をしていたからわかるの。闇魔法にかかった荷物はどれも苦しそうだったわ」
〔ギ……〕
「あなたはきっと、帝国軍に派遣されたのよね。もしかしたら、人間への不信感があるのかもしれない。これしか言えないけど……私たちを信じてほしいの」
「奥様、どうしてそこまで……ただのゴーレムですのに……」
ゴーレムに話しかけながら、私はアドラントへ来たときの心境を思い出していた。
婚約者と義妹に裏切られ追放……ディアボロ様たちに出会っていなかったら、それこそ私も人間不信に陥っていたかもしれない。
あのときの孤独感や虚無感は、今でも鮮明に覚えている。
そして、その後から始まった優しい日々の安心感も……。
「私もあの子に優しさを感じてほしいんです。私がここで毎日感じているように」
さらに一歩踏み出す。
小鳥ゴーレムは私に向けて突進してきた。
「奥様!?」
〔ギギ!〕
「だけど、私ならどうにかできるわ。あなたにかかった闇魔法を解呪してみせる。だから、おねがい。こちらへ来てくれない?」
懸命に訴えかけると動きを止めた。
空中でパタパタと飛んでいる。
お願い、私の想いが届いて!
〔……ピ〕
小鳥ゴーレムはパタパタと飛んできた。
ポン……と私の手の平に収まる。
「やりましたね、奥様! ゴーレムと心を通わすなんて。しかも、闇魔法にかかっていましたのに」
『さすがは俺たちのキュリティだ』
「ありがとう、私を信頼してくれて。あとは解呪するだけだからね。痛くないから安心して」
〔ピ〕
小鳥ゴーレムを手の平でそっと包む。
金属製なのに不思議と温かかった。
「奥様、闇魔法の方はどうですか?」
『重度なのか?』
「いえ、それほどでもありません。ちょっと魔力を込めるだけで大丈夫です。身体が小さいので、侵食している闇魔法も少ないのでしょう」
静かに魔力を込めていく。
この子にかかっている闇魔法はそれほど強くなさそうだ。
ちょっとだけ魔力を込めるだけで大丈夫。
瞬く間に、禍々しいオーラは消えてしまった。
「はい、これでもう大丈夫よ。頑張ったね」
『ピー!』
小鳥ゴーレムは嬉しそうに私たちの周りを飛んでいる。
くすんだ焦げ茶色は汚れが落ちたようにすっきりしている。
目からも凶暴さが消え、くりくりと可愛い黒目になっていた。
「さあ、もうあなたの好きなところに行っていいのよ。自由に生きなさい」
『……ピ』
小鳥ゴーレムはパタパタと飛ぶと、私の肩に留まった。
翼に顔をうずめて毛繕いしている。
「あ、あれ? どうしたの? ほら、好きなところに行っていいのよ」
『ピ』
いくら言っても、小鳥ゴーレムは私の肩から動こうとしない。
困っていると、バーチュさんたちが話しかけてきた。
「きっと、奥様と離れたくないのだと思います」
『キュリティのことを気に入ったんだろうよ。優しいからな』
「私のことを……?」
『ピ!』
小鳥ゴーレムを撫でると、嬉しそうに押し返してきた。
しきりに私の指を甘噛みしてくる。
こうしてみると本物の小鳥みたいだ。
〔ギィッ!〕
私たちが近づくと、小鳥ゴーレムは羽を激しくばたつかせる。
目も怖そうに赤く光っていた。
バーチュさんとフローズさんも対応に苦慮しているようだ。
「やはり、闇魔法によって凶暴化しているようです。あそこまで人間に敵意を示すとは」
『ゴーレムは元々人間に忠実なはずなんだがなぁ』
慎重に近づきつつ、私は昔学んだことを思い出していた。
フローズさんの言うように、ゴーレムは人間が作った物だ。
心を通わせれば、それこそ本当の動物のように接してくれると聞いたことがある。
闇魔法に侵食されていても、まだあの子の心は生きているかもしれない。
だったら……。
ずいっとバーチュさんたちより前に出る。
「こんにちは、小鳥のゴーレムさん。私はキュリティ。あなたにお名前はあるのかな?」
〔ギ!〕
「お、奥様! 危ないですから後ろに……!」
「いえ、まずは対話させてください。きっと、あの子も不安なんです。だから、少しでも恐怖心を和らげてあげるのが大事だと思います」
あの小鳥ゴーレムは不安でいっぱいなのだ。
魔族領に置いていかれ、闇魔法に侵食され、馴染みのない土地に迷い込んで……その不安や恐怖は言葉にできないだろう。
ゴーレムと対話を続ける。
「闇魔法って苦しいよね。私は<解呪>の力があってね、王宮で荷物の検査をしていたからわかるの。闇魔法にかかった荷物はどれも苦しそうだったわ」
〔ギ……〕
「あなたはきっと、帝国軍に派遣されたのよね。もしかしたら、人間への不信感があるのかもしれない。これしか言えないけど……私たちを信じてほしいの」
「奥様、どうしてそこまで……ただのゴーレムですのに……」
ゴーレムに話しかけながら、私はアドラントへ来たときの心境を思い出していた。
婚約者と義妹に裏切られ追放……ディアボロ様たちに出会っていなかったら、それこそ私も人間不信に陥っていたかもしれない。
あのときの孤独感や虚無感は、今でも鮮明に覚えている。
そして、その後から始まった優しい日々の安心感も……。
「私もあの子に優しさを感じてほしいんです。私がここで毎日感じているように」
さらに一歩踏み出す。
小鳥ゴーレムは私に向けて突進してきた。
「奥様!?」
〔ギギ!〕
「だけど、私ならどうにかできるわ。あなたにかかった闇魔法を解呪してみせる。だから、おねがい。こちらへ来てくれない?」
懸命に訴えかけると動きを止めた。
空中でパタパタと飛んでいる。
お願い、私の想いが届いて!
〔……ピ〕
小鳥ゴーレムはパタパタと飛んできた。
ポン……と私の手の平に収まる。
「やりましたね、奥様! ゴーレムと心を通わすなんて。しかも、闇魔法にかかっていましたのに」
『さすがは俺たちのキュリティだ』
「ありがとう、私を信頼してくれて。あとは解呪するだけだからね。痛くないから安心して」
〔ピ〕
小鳥ゴーレムを手の平でそっと包む。
金属製なのに不思議と温かかった。
「奥様、闇魔法の方はどうですか?」
『重度なのか?』
「いえ、それほどでもありません。ちょっと魔力を込めるだけで大丈夫です。身体が小さいので、侵食している闇魔法も少ないのでしょう」
静かに魔力を込めていく。
この子にかかっている闇魔法はそれほど強くなさそうだ。
ちょっとだけ魔力を込めるだけで大丈夫。
瞬く間に、禍々しいオーラは消えてしまった。
「はい、これでもう大丈夫よ。頑張ったね」
『ピー!』
小鳥ゴーレムは嬉しそうに私たちの周りを飛んでいる。
くすんだ焦げ茶色は汚れが落ちたようにすっきりしている。
目からも凶暴さが消え、くりくりと可愛い黒目になっていた。
「さあ、もうあなたの好きなところに行っていいのよ。自由に生きなさい」
『……ピ』
小鳥ゴーレムはパタパタと飛ぶと、私の肩に留まった。
翼に顔をうずめて毛繕いしている。
「あ、あれ? どうしたの? ほら、好きなところに行っていいのよ」
『ピ』
いくら言っても、小鳥ゴーレムは私の肩から動こうとしない。
困っていると、バーチュさんたちが話しかけてきた。
「きっと、奥様と離れたくないのだと思います」
『キュリティのことを気に入ったんだろうよ。優しいからな』
「私のことを……?」
『ピ!』
小鳥ゴーレムを撫でると、嬉しそうに押し返してきた。
しきりに私の指を甘噛みしてくる。
こうしてみると本物の小鳥みたいだ。
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