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第53話:再会を誓って
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「ウンディーネさんたちにも、王国による圧政が始まったのでしょうか?」
『ええ、そうです。よくご存じですね。水の綺麗な場所を提供する代わりに、私たちが生み出す特別な聖水を献上しろとのご命令で……。前はこんなことなかったんですけどね。聖水を生み出すのは難しく、正直なところ負担になっているのです』
リロイは疲れの滲む表情で詳細を話す。
アルバティス王と双子兄は、ネオンを追放した後に圧政の対象亜人を急速に拡大し、ウンディーネもその中に組み込まれた。
国内貴族や周辺国に高値で売って私服を肥やすために、一族の大切な儀式や祭典で用いる貴重な聖水の献上を求められていたのだ。
ネオンはリロイの話を、拳を固く震わせながら聞いた。
「水の中から領地を見ていたなら、僕がアルバティス王国の王子ということも知っていますよね?」
『もちろんですよ。王子なんて偉い人なのに、威張らないのもまた素晴らしいです』
「……ごめんなさい」
『えっ!? ネオン殿ちゃんさん君様、どうされたのですか!?』
リロイの話を聞き、ネオンは深く頭を下げた。
申し訳ない気持ちで胸がいっぱいだった。
「僕の父と兄たちがひどいことをして……申し訳ありません。把握できなかった僕にも責任があります」
ネオンの心にはリロイたちウンディーネや、王国の亜人に対する申し訳なさとふがいなさが沸く。
隣のブリジットを見ると、静かにこくりとうなずいた。
決心を固めたネオンは、深呼吸して気持ちを整えて告げる。
「もしよかったらですが……ここで僕たちと、一族の皆さんと一緒に住みませんか?」
『えっ!? この素晴らしい土地で……ですか?』
ネオンの申し出に、リロイは思わず尋ね返す。
まさか、そんな提案を受けるとは思わなかった。
驚きで固まる彼女に、ネオンは真剣な眼差しで話す。
「僕はこの飛び地を世界中のどこよりも発展させたいと思っています。何より、亜人の皆さんが迫害されない、みんなが幸せに楽しく暮らせる領地にしたいんです」
『ネオン殿ちゃんさん君様……。あなたはなんて立派な考えの持ち主なんですか……』
リロイは感動で涙ぐむ。
緑も水も豊かなこの土地で暮らせるなど願っても叶ったりであり、心の中で思い描いてた理想郷そのものだ。
ネオンは緊張しながら答えを尋ねる。
「ど、どうでしょうか……?」
『ぜひ、お願いします! 仲間もこんな豊かな土地で、ネオン殿ちゃんさん君様みたいな優しい方と暮らせると聞いたら、大喜びするはずです! 一族総出でお世話になりますね!』
「よかったです! こちらこそよろしくお願いします!」
未来の再会を誓って、ネオンはリロイと硬く握手を交わした。
歓迎の宴を開こうと提案したが、仲間にすぐ知らせたいとのことで、リロイはそのまま水路に向かう。
川に入って、泳ぎながら帰るそうだ。
『ありがとうございました、ネオン殿ちゃんさん君様、そして飛び地のみなさま~。またお会いできる日を楽しみにしております~』
「「お元気で~」」
リロイは手を振って、領地から流れ去って行く。
ネオンも笑顔で見送りながら、傍らのジャンヌと話す。
「ウンディーネの皆さんもいらっしゃるなんて、これからもっと賑やかになりそうですね」
『ああ、水の精霊と暮らせるとは妾たちも誇らしいのぉ。これも全部ネオンの人望と力のおかげじゃな』
スパイ三人も領民も温かい瞳で、水路を遡るリロイを見送る。
彼女たちは心の中で、またもやネオンに対して感銘を受けていた。
(……やっぱり、ネオンはすげえヤツだ。ウンディーネと一緒に住むなんて、帝国でもあり得ないぞ)
(ネオン君は精霊さえ虜にしてしまうんだね。さすがだよ)
(わたくしも……見習わないといけません。もっと立派な人間になりたい)
色々と思われているとも露知らず、ネオンは隣のブリジットを見る。
領地の展望を喜んでくれているはずだと。
「ブリジットもそう思……うぐっ」
彼女だけは鷹のように視線が厳しかった。
さっと血の気が引くのを感じる。
――ブリジットのジト目……。これはもしかして……もしかしてだよね?
ネオンはごくりと唾を飲み、緊張しながら尋ねる。
「あ、あの~、何かお気に召さないところが……」
「……また女性ばかり来るんですかね」
「い、いやっ、男性のウンディーネもいると思うよっ」
「なんでこう、ネオン様の周りにはいつも女性が集まるのでしょうか」
「ま、まだ、決まったわけじゃないからねっ。どうか機嫌を治してぇっ!」
頬を膨らますブリジットを、ネオンはいつまでも懸命に宥めていた。
『ええ、そうです。よくご存じですね。水の綺麗な場所を提供する代わりに、私たちが生み出す特別な聖水を献上しろとのご命令で……。前はこんなことなかったんですけどね。聖水を生み出すのは難しく、正直なところ負担になっているのです』
リロイは疲れの滲む表情で詳細を話す。
アルバティス王と双子兄は、ネオンを追放した後に圧政の対象亜人を急速に拡大し、ウンディーネもその中に組み込まれた。
国内貴族や周辺国に高値で売って私服を肥やすために、一族の大切な儀式や祭典で用いる貴重な聖水の献上を求められていたのだ。
ネオンはリロイの話を、拳を固く震わせながら聞いた。
「水の中から領地を見ていたなら、僕がアルバティス王国の王子ということも知っていますよね?」
『もちろんですよ。王子なんて偉い人なのに、威張らないのもまた素晴らしいです』
「……ごめんなさい」
『えっ!? ネオン殿ちゃんさん君様、どうされたのですか!?』
リロイの話を聞き、ネオンは深く頭を下げた。
申し訳ない気持ちで胸がいっぱいだった。
「僕の父と兄たちがひどいことをして……申し訳ありません。把握できなかった僕にも責任があります」
ネオンの心にはリロイたちウンディーネや、王国の亜人に対する申し訳なさとふがいなさが沸く。
隣のブリジットを見ると、静かにこくりとうなずいた。
決心を固めたネオンは、深呼吸して気持ちを整えて告げる。
「もしよかったらですが……ここで僕たちと、一族の皆さんと一緒に住みませんか?」
『えっ!? この素晴らしい土地で……ですか?』
ネオンの申し出に、リロイは思わず尋ね返す。
まさか、そんな提案を受けるとは思わなかった。
驚きで固まる彼女に、ネオンは真剣な眼差しで話す。
「僕はこの飛び地を世界中のどこよりも発展させたいと思っています。何より、亜人の皆さんが迫害されない、みんなが幸せに楽しく暮らせる領地にしたいんです」
『ネオン殿ちゃんさん君様……。あなたはなんて立派な考えの持ち主なんですか……』
リロイは感動で涙ぐむ。
緑も水も豊かなこの土地で暮らせるなど願っても叶ったりであり、心の中で思い描いてた理想郷そのものだ。
ネオンは緊張しながら答えを尋ねる。
「ど、どうでしょうか……?」
『ぜひ、お願いします! 仲間もこんな豊かな土地で、ネオン殿ちゃんさん君様みたいな優しい方と暮らせると聞いたら、大喜びするはずです! 一族総出でお世話になりますね!』
「よかったです! こちらこそよろしくお願いします!」
未来の再会を誓って、ネオンはリロイと硬く握手を交わした。
歓迎の宴を開こうと提案したが、仲間にすぐ知らせたいとのことで、リロイはそのまま水路に向かう。
川に入って、泳ぎながら帰るそうだ。
『ありがとうございました、ネオン殿ちゃんさん君様、そして飛び地のみなさま~。またお会いできる日を楽しみにしております~』
「「お元気で~」」
リロイは手を振って、領地から流れ去って行く。
ネオンも笑顔で見送りながら、傍らのジャンヌと話す。
「ウンディーネの皆さんもいらっしゃるなんて、これからもっと賑やかになりそうですね」
『ああ、水の精霊と暮らせるとは妾たちも誇らしいのぉ。これも全部ネオンの人望と力のおかげじゃな』
スパイ三人も領民も温かい瞳で、水路を遡るリロイを見送る。
彼女たちは心の中で、またもやネオンに対して感銘を受けていた。
(……やっぱり、ネオンはすげえヤツだ。ウンディーネと一緒に住むなんて、帝国でもあり得ないぞ)
(ネオン君は精霊さえ虜にしてしまうんだね。さすがだよ)
(わたくしも……見習わないといけません。もっと立派な人間になりたい)
色々と思われているとも露知らず、ネオンは隣のブリジットを見る。
領地の展望を喜んでくれているはずだと。
「ブリジットもそう思……うぐっ」
彼女だけは鷹のように視線が厳しかった。
さっと血の気が引くのを感じる。
――ブリジットのジト目……。これはもしかして……もしかしてだよね?
ネオンはごくりと唾を飲み、緊張しながら尋ねる。
「あ、あの~、何かお気に召さないところが……」
「……また女性ばかり来るんですかね」
「い、いやっ、男性のウンディーネもいると思うよっ」
「なんでこう、ネオン様の周りにはいつも女性が集まるのでしょうか」
「ま、まだ、決まったわけじゃないからねっ。どうか機嫌を治してぇっ!」
頬を膨らますブリジットを、ネオンはいつまでも懸命に宥めていた。
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