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第30話:愛情(Side:アイザック②)
結局、夜会はすぐに解散となり、アイザックはステラを抱いて屋敷に帰宅した。
(赤子は寝ると重くなるな)
腕の中ですっかり寝てしまった彼女を、丁寧にベビーベッドに寝かせる。
アイザックが慣れぬ手つきで毛布をかけていると、そのいそいそした感じでステラはぼんやり目が覚めた。
見慣れた天井やベビーベッドの柵が目に入る。
(ここは私の部屋? そっか、ギュスターヴを怒った後寝ちゃったんだ。パパ様、運んできてくれてありがとう。……って、そのパパ様が毛布をかけてくれている?)
嬉しさのあまり、ステラはぱちっと目を開けた。
彼女が起きたことに気づくと、一方のアイザックは動きを止めた。
「起こしてしまったか?」
ステラはふるふると首を横に振る。
起こされたのではなく、自然に目が覚めたのだ。
目をぱちくりさせていたら、アイザックの後方からティナ、マチルダ、ジスランの面々が顔を出して労いの言葉をかける。
「お疲れ様でございました。大人の男性、しかも公爵様に啖呵を切る赤ちゃんなんて、わたしは初めて見ました」
「ステラお嬢様は心の成長もお早いのですね。正直なところ、あたいはスカッとさせていただきましたよ」
「僕はもうひやひやしっぱなしでしたがね。もし危害が加えられそうになったら、我が身を呈してでもお守りするつもりでした」
(むふ、みんなにも褒められちゃった)
三人に夜会での立ち回りを讃えられてステラは嬉しい。
できることならお喋りしたかったが、急激に眠気が襲ってきた
(どうして、一度起きたはずなのに……。これが赤ちゃんの身体? もっとお喋りしたい……パパ様とだっ、て……)
赤子の身体ではとうてい眠気には抗えず、ステラは今度こそ深い眠りに落ちてしまった。
すぅすぅと長閑な寝息を立て始めたところで、アイザックがみなに呼びかける。
「少し一人にさせてくれるか?」
何かを察したマチルダたち三人は、無言で礼をして部屋を出る。
室内には静寂が戻り、アイザックはベビーベッドのすぐ近くに座った。
手を伸ばせば届いてしまう場所に、小さなステラがすやすやと眠る。
その寝顔は無防備で純粋で、強く抱いたら壊れてしまいそうに儚い。
しばらく眺めていたら、ステラがギュスターヴに憤怒した場面が思い出された。
――パパしゃまが馬鹿にされるのが許せなかったんでしゅ。
「お前は私を守ろうとしてくれたんだな。まだ一歳にも満たない幼子なのに……」
ギュスターヴの牽制自体は、彼女の援護がなくても淡々と対応できただろう。
ただ、アイザックがあらぬ嫌疑をかけられたり馬鹿にされたことがステラは許せなかった。
それは彼自身にもよく伝わっており、なおさらその思いに尊さを感じたのだった。
ステラの寝顔をそっと撫でる。
きめ細かい滑らかな肌が手に吸いつき、赤ちゃんの高い体温がじんわりと伝わった。
(ステラを見ていると胸が温かくなる。こんな感覚は生まれて初めてだ。……なぜだろうな)
ステラを優しく撫で愛でていると、気づいたアイザックは小さく笑った。
(そうか。これが……娘に対する“愛情”なのか)
彼の赤い瞳には、大事な娘を見守る優しさが溢れるのだった。
(赤子は寝ると重くなるな)
腕の中ですっかり寝てしまった彼女を、丁寧にベビーベッドに寝かせる。
アイザックが慣れぬ手つきで毛布をかけていると、そのいそいそした感じでステラはぼんやり目が覚めた。
見慣れた天井やベビーベッドの柵が目に入る。
(ここは私の部屋? そっか、ギュスターヴを怒った後寝ちゃったんだ。パパ様、運んできてくれてありがとう。……って、そのパパ様が毛布をかけてくれている?)
嬉しさのあまり、ステラはぱちっと目を開けた。
彼女が起きたことに気づくと、一方のアイザックは動きを止めた。
「起こしてしまったか?」
ステラはふるふると首を横に振る。
起こされたのではなく、自然に目が覚めたのだ。
目をぱちくりさせていたら、アイザックの後方からティナ、マチルダ、ジスランの面々が顔を出して労いの言葉をかける。
「お疲れ様でございました。大人の男性、しかも公爵様に啖呵を切る赤ちゃんなんて、わたしは初めて見ました」
「ステラお嬢様は心の成長もお早いのですね。正直なところ、あたいはスカッとさせていただきましたよ」
「僕はもうひやひやしっぱなしでしたがね。もし危害が加えられそうになったら、我が身を呈してでもお守りするつもりでした」
(むふ、みんなにも褒められちゃった)
三人に夜会での立ち回りを讃えられてステラは嬉しい。
できることならお喋りしたかったが、急激に眠気が襲ってきた
(どうして、一度起きたはずなのに……。これが赤ちゃんの身体? もっとお喋りしたい……パパ様とだっ、て……)
赤子の身体ではとうてい眠気には抗えず、ステラは今度こそ深い眠りに落ちてしまった。
すぅすぅと長閑な寝息を立て始めたところで、アイザックがみなに呼びかける。
「少し一人にさせてくれるか?」
何かを察したマチルダたち三人は、無言で礼をして部屋を出る。
室内には静寂が戻り、アイザックはベビーベッドのすぐ近くに座った。
手を伸ばせば届いてしまう場所に、小さなステラがすやすやと眠る。
その寝顔は無防備で純粋で、強く抱いたら壊れてしまいそうに儚い。
しばらく眺めていたら、ステラがギュスターヴに憤怒した場面が思い出された。
――パパしゃまが馬鹿にされるのが許せなかったんでしゅ。
「お前は私を守ろうとしてくれたんだな。まだ一歳にも満たない幼子なのに……」
ギュスターヴの牽制自体は、彼女の援護がなくても淡々と対応できただろう。
ただ、アイザックがあらぬ嫌疑をかけられたり馬鹿にされたことがステラは許せなかった。
それは彼自身にもよく伝わっており、なおさらその思いに尊さを感じたのだった。
ステラの寝顔をそっと撫でる。
きめ細かい滑らかな肌が手に吸いつき、赤ちゃんの高い体温がじんわりと伝わった。
(ステラを見ていると胸が温かくなる。こんな感覚は生まれて初めてだ。……なぜだろうな)
ステラを優しく撫で愛でていると、気づいたアイザックは小さく笑った。
(そうか。これが……娘に対する“愛情”なのか)
彼の赤い瞳には、大事な娘を見守る優しさが溢れるのだった。
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